2012年9月26日水曜日

領土問題その2

日本と周辺諸国の領土問題を考える前提として、第2次大戦終了時の東アジアの雰囲気を忘れてはなりません。 原爆水爆を食らい、首都および主要都市&インフラを空襲で壊滅させられた日本は、実質滅亡状態であり、いずれそう遠くない時期に、地球上から消滅する国と見られていました。少なくとも、日本以外のアジア諸国はそう見ていました。日本は必ず復活するなんて思っていたのは、日本人でも一部に過ぎません。 東アジアを含むユーラシア大陸は、社会主義共産主義の赤色に染め尽くされると思われていました。 こんなに悲惨な戦争の原因は資本主義にあるとされたからです。アメリカでさえ、そうした考えが主流となりつつありました。 ちなみにアメリカがそうならなかったのは、イデオロギーの力ではなく、宗教の力、つまりキリスト教の力でした。宗教を否定する社会主義共産主義を、清教徒の国であるアメリカはどうしても許せなかったんです。それはどちらが正しいかではなく、神と悪の戦いと同義だったからです。 東アジアにはそうした抵抗勢力が存在しなかったため、帝国主義の日本が消滅すれば、あとは平和と平等の社会主義共産主義のユートピア世界が誕生するのを待つだけ。時間の問題。そういう雰囲気でした。 ところが社会主義共産主義勢力は、朝鮮戦争でまさかの朝鮮半島制圧に失敗。 そのままの流れで、東アジア地域もヨーロッパ同様に東西冷戦状態に陥ります。 そしてそんな中、いずれ消滅するのは確実と見られていた日本が奇跡の復活を遂げてしまいました。 このことは東アジアの関係諸国にとって、戦後最大の誤算となりました。 さらに追い討ちが掛かります。 社会主義共産主義が歪み、その結果、東西冷戦で東側の大敗北。 終戦時には圧倒的な優位にあった北朝鮮に対抗させるために、アメリカが日本に課したノルマである韓国の国力アップミッション(戦時体制を維持させたまま経済を強化するという非常に無理筋なミッションでした)も、アメリカの期待以上にやり遂げました。 やがて東側が自壊したことにより、終わらないと思われた冷戦は、西側の地滑り的勝利として終わります。 こうした状況の変化は、すべて終戦時にはだれも想像していなかったことだということを、前提にして考えないと、昨今の領土問題は混乱するだけです。 領土問題や歴史認識についての韓国や中国の主張はすべて、現在から過去を振り返っての視点に立って構築されています。現在がこうであるためには、過去はこうでなければならない、という論法です。両国は、当時はどうであったとか、実際にはどうであったとか、そういったことに関心はないのです。 こうした歴史観は中国、というかシナ文化圏の伝統的な歴史観であって、それは司馬遷にまでさかのぼる根深い文化です。 この地域の大陸文化圏の人々には、この歴史観が血肉となって染み付いています。 逆の見方をすれば、このいわゆるシナ(中国はあくまで国名の略称です)文化圏であるなら、正しい歴史観はこっちの方であって、むしろ同じ文化圏にありながら客観的な史実にこだわる歴史観の日本の方が異常だと言えるわけです。 ということは、日本的な歴史観に基づいて、中国韓国両国を説得することはできない、ということになります。なぜなら、こちらの方が異常なのですから。 客観的に見ても、史実的に見ても、正しいのは日本の方です。でも、それは、この文化圏では通用しないのです。 ですからこの地域で領土問題を解決するには、日本が相手に合わせるか、相手が変化するのを待つか、その二つしか道はありません。 日本が証拠を挙げて正論を主張すれば中国韓国を説得できる、誠意を持って根気強く説明すればわかってくれる、国際司法裁判所の裁定が下れば従わざるを得ないはず、などと考えるのはこの地域(何度でも書きますが、いわゆるシナ地域文化圏のことです)を知らないからです。こんな期待を持ってもがっかりイライラ腹立たしい思いをするだけで、自分の損です。そんなことはあり得ないからです。彼らは絶対に認めません。認めないためになら死を選ぶくらいのことはやります。血肉となるというのは、そのくらい強烈なことなんです。自らの存在意義そのものに掛かる大問題であって、自分が間違っていたとは間違っても認められないんです。やっかいな連中です。でも、それがふつうなんです。本来は。この地域では。日本の方が異常なんです。この地域では。そこをわかってあげないと。 日本が、敗戦後の自国の領土を守るためには、ロシアを含めた中国韓国といった国々の側にとっての「現在の歴史」が変わってくれるのを気長に待つしかありません。 中国や韓国の将来の歴史で、己の正統性を証しせねばならずその時点での状況を正当化するために、昨今の両国の政権は間違っていたとなったとき、領土問題や歴史認識を含めた戦後のこうした問題は、あっさりと解決するでしょう。 それまでは、どうにもなりません。

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