2012年12月6日木曜日

セ大阪 クルピ監督コラム③

FELIZ! フェリース(ポルトガル語で“幸せな”)③
日本の育成には未来がある

朝日新聞朝刊 2012年12月4日 火曜日

1日の最終節の川崎戦ではロスタイムに引き分けに持ち込んだ。
自力でJ1に残れて、本当にうれしい。
残留ラインの勝ち点が過去最高になったのは驚きだ。

今季はJリーグの歴史のなかでも、誰も予想できなかった異例の年。
全体のレベルは少し落ちていた。
優勝経験のあるガ大阪がJ2に降格して、鹿島までも残留争いに巻き込まれた。
強豪は代表や五輪に選手たちを取られたうえに、育てた若手が欧州のクラブに流出してしまったのが痛かった。

優勝を争った広島と仙台はメンバーが固定されてチームの完成度が高かった。
クラブに資金力はないが、A代表などに選ばれる選手が少ないことが、逆にプラスに働いた。

今は日本の景気も悪く、ブラジルなどから最高クラスの選手を呼んでくるのは不可能。
補強にお金をかけられないクラブが増えることで、力が伯仲した時代が続くだろう。

初めてセ大阪で指揮した1997年にはジョルジーニョ、スキラッチ、ストイコビッチら各国の代表級がいた。
あの時代に興味を持った子供たちがJの育成組織に集まってきて、今、Jリーガーになっている。

日本の育成組織は素晴らしく、世界の強豪に近づくための土台となっている。
基礎技術を大事にし、ひたむきに練習する国民性もあって、技術力が高い選手が育っている。

日本人は敏捷性に優れているし、献身的なプレーも大きな特徴だ。
もっと得点を増やすなど、数字へのこだわりを持てば、MFだけでなく、世界に通用するFWも出てくる。

日本にはマンチェスター・ユナイテッドの(香川)真司のような才能を持った原石がゴロゴロいる。
歴史を積み重ねれば、これからもどんどん世界のトップで活躍する選手が出てくる。

ただ、最近の若手は海外に出るのが早すぎる。
真司もキヨ(清武)も乾もそう。
Jリーグで優勝してから移籍すれば、名前も売れて、移籍金も高くなる。
もし、3人がセ大阪に残っていれば、今季は優勝戦線に絡んで、こんなに苦労することもなかったのに。

おわり


前回までで言いたいことは言い終えたのか、あるいは最終回であろう次回のためにとってあるのか、そのどちらかなのであろうと邪推してしまうくらい、内容のない今回のコラム。
セ大阪がJで大変だったので、コラムのことにまで頭が回らなかったのかもしれない。

このコラムに関連して、わたしが常日頃抱いている疑問のひとつを簡単に書く。

【疑問 海外移籍する選手が増えたのは、本当に育成の結果?】

このコラムにもある通り、一般的には、日本の育成が素晴らしいので、その成果として海外でも活躍する選手が増えてきた、と考えられている。

でもわたしはそこに疑問を感じている。
それは本当に育成システムが向上した結果なの? と。

わたしにはそれが、サッカー開始年齢の低下(つまり、サッカー経験の量的増)と、欧州の経済悪化によるものであって、単純に、日本サッカー界の育成システムが向上したことによって選手のレベルが上がったから、とは言えないと考えている。っていうか、「日本の育成のレベルが高いって? それはないでしょ」と思っている。

どうしてそう思うのかという理由を、ここでは2点だけ述べる。

・長年日本サッカーと似たようなレベルで戦ってきた他の国(韓国、中国、アメリカ、オーストラリア、イラク、イランなど)を見ると、日本人選手よりもずっと先に、すでにたくさんの選手がヨーロッパ各地で活躍している。

・長友がいい選手であって、わたしも好きなプレースタイルであることは間違いなのだが、それでもインテルでポジションを確保できるようなレベルにないことは、誰の目にも明らか。

以上の点を頭において、同じテーマを考えてみれば、どうも「日本の育成が素晴らしいから日本人選手のレベルがアップした」という分析は成立しにくいのがわかると思う。なぜなら、日本以外の国の選手の活躍についてと、インテルというチーム自体の低迷っぷりの説明がつかないから。

それに、育成の方法でそれほど劇的な変化があったとは思えない日本野球界でも、年々北米メジャーでプレーする選手が増えていることも忘れてはいけない。
あとJのチームがここ数年陥っている、ACLでの悲惨な状況からも目をそらしてはいけない。

日本サッカー界の育成には、まだまだ問題が多いし、レベルも決して高くはない、と私は確信している。

以上

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