2011年7月12日火曜日

アルゼンチン版谷間の世代

ちょっと古い話題ですけど、2011U-17ワールドカップ・メキシコ大会において、我が日本代表が“強豪”アルゼンチン代表を3-1で粉砕しました。
わざわざ“強豪”と「ダブル引用符、あるいはダブルコーテーション、あるいはダブルアポ」で「強豪」という表現をくくったのには訳があります。

先々週、こんな本を読みました。

『ストライカーのつくり方』
アルゼンチンはなぜ得点を量産できるのか。
著者 藤坂ガルシア千鶴
講談社現代新書 2111
2011.6.20発行 777円(税込)

──引用開始──

2018年への不安
サローリオは「2018年ワールドカップに出場しうる選手がアルゼンチンに不足している」ことを指摘。
(中略)
サローリオが2018年に抱く不安は、アルゼンチンにおいてこれまで途切れることのなかった「天才出現の連鎖」が滞ってしまった現状を明らかにしている。
「次のワールドカップにはメッシ、テベス、アグエロ、ディ・マリアがいる。ところが今のユース世代に、彼らに匹敵するだけの才能を持った天才がいないのだ」
229~230ページ
※ ヘラルド・サローリオ
ホセ・ペケルマンのスタッフとして94~07年にアルゼンチンのユースおよびフル代表のフィジカルコーチを務めた。就任期間中にアルゼンチンはU20W杯で優勝5回。現在はアルゼンチンサッカー協会より、全国のトレーニングセンターでのテクニカル・ディレクターを任されている。
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父ホルヘ・イグアインが──
(前略)イグアインが幼い頃から教えてきた大切なことがあった。それは「サッカーだけの人間にならないこと」である。

「あの子は4歳のときから将来サッカー選手になると決めていたが、プロを目指す道はとても厳しいことを理解させる必要があった。私自身、才能があるのにプロになれなかった仲間たちのケースを間近で見て来たからね。だから、もし息子たちがサッカーをつづけたいのなら、高校を卒業するまでは学校の勉強も手を抜かないことを条件としたんだ」

ホルヘ曰(いわ)く、高校卒業とプロ契約の時期はたいてい一致する。その時点でもしプロになれそうにないとわかった場合、すぐに大学に大学に進める準備をしておくためだ。

「毎日朝から晩までボールさえ蹴っていればプロになれるというわけではない。まずは学校の勉強、それからサッカー。その順番でいいのだよ」
98~99ページ
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アウェーの試合になれば、たとえそれがユース最年少のカテゴリーである9軍であろうと、観客から容赦なく野次られる。レフェリーがホームチームに不利な判定をしようものならすさまじいブーイングの嵐となる。逆にホームゲームでは、家族からの応援を一身に受けて「勝たねばならない」というプレッシャーに追い込まれる。
123ページ
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ジュニアやユースの指導者たちに「育成における最も大きな問題点は何か」と聞くと、決まって「選手の親」という答えが返ってくる。
(中略)
まず、自分の子供が試合に出してもらえない状況に耐えられず、指導者にクレームをつける。いざ試合に出ると、子供のミスを怒鳴りつづける。我が子がファウルを受けると相手選手を詰(なじ)る。交代させられようものなら、今度は監督を怒鳴りつづける。
131~132ページ

──引用終了──

U-17W杯やコパ・アメリカを見て思うのは、天才の枯渇に悩んでいるのはアルゼンチンだけじゃなくて、ブラジルもだなぁってことです(結局ドゥンガ監督の選んだ道しかなかったってことなのかも)。両国とも、中盤の才能が薄くなっています。その薄さは、とうにルーニー・スナイデル級を通り越し、もはやロッベン級です。

面白いもので、昔は両国とも、前線の才能をさがすのに苦労していたんです。
ブラジルは1970年の黄金期以降、ロマーリオやロナウドが出現するまでは、まともな前線を組めないせいでずっとW杯を逃してきました。
アルゼンチンも、八百長78年W杯のケンペスを例外とすれば、生ける伝説のディ・ステファーノ以降、バティストゥータ、クレスポまでずっとFW不在のようなものでした(ラモン・ディアスの評価については微妙)。

それがいまや、世界のトップリーグのトップチームへFWを供給する2大輸出国です。

コパで中盤の面白い選手を見ようと思ったら、パラグアイやベネズエラやチリの試合を観た方がワクワクするんだから、南米のサッカー地図も変わったってことですよねぇ。

あしなが育英会 遺児奨学金「あしながさん」 継続寄付

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