2010年5月1日土曜日

時間割引率と少年サッカー

私たち人間は満足に飢えている。
満足したくてたまらないでいる。
それもいますぐ。

明日どうなるかわからない原始人の時代を生き抜いてきた遺伝子にしてみれば、
「もうすぐ熟すから。熟してからの方が数段おいしいよ」
と理性ではわかっていても、まだ青い果実でも口に入れろ、腹を膨らませろ、という本能に負けてしまう。
熟してからなんて悠長なことを言っていたら、他人に先を越されるか、あるいは自分の方に何かあって食べられないかもしれないのだから。それは即、「死」に直結する。

だから人間は、未来の満足よりも、今の満足の方に重きをおいて判断する。

 未来の満足<現在の満足

これを時間割引率という。

ダイエットはいつも明日から、とか、衝動買い、といったいい訳や行動は、この時間割引率に関係している。
「今」満足したいのだ。

練習をさぼりがちな子は、この時間割引率の大きな子だと考えて良い。
彼の中では、一ヶ月後の大会で活躍する満足よりも、今日楽をする満足、あるいは練習をさぼってゲームをする満足の方が、はるかに大きいのだ。
いくら口を酸っぱくして言い聞かせても、彼の行動は変わらないだろう。
なぜならこれは、無意識下のなせるわざだからだ。

「さぼる子にはさぼる理由がある」この原則を理解した上で、対策を立てるなら立てる、立てないなら立てない、を大人は判断しなければならない。じゃないと時間と労力と気遣いのムダになって、ストレスばかりが溜まってしまう。

考えられる方法には、
①不等号を等号に変える。
②不等号の向きを変える。
のふたつがある。

①は彼がさぼってやりたがっている事や、さぼって楽することに何かつけ加えて、そのことの満足度を下げてしまい、等号にするとか、練習を楽なものにするとか、ゲーム性を強めたり、やたらとその子をほめまくったりして等号にするやりかただ。

②は、さぼったら厳罰を与えるとかして、現在の満足を極力小さくするとか、あるいは一ヶ月後の大会に勝てばどんなに良いことが待っているかを過剰なまでに信じ込ませて、将来の満足を肥大化させるとかして、不等号の向きを逆転させてしまう。


人間は目の前の満足にはとても弱い生き物だ。
そうすることが、生き残るためには必要だったからだ。
だからそのこと自体は、決して悪いことではない。
むしろそのことを理解した上で、自分でそれを利用して、自分をうまく動かすくらいの方がストレスはたまらない。
練習しろしろ、勉強しろしろ、ではダメだということを、自分も周りの大人もわかってやるべきだ。
1年後なんて、私もあなたも、生きていないのかも知れないのだから。