2010年7月9日金曜日

攻撃的と守備的

サッカーでそのチームが攻撃的なのか守備的なのかは、マイボールの時に自陣ゴール前にいる人数でわかる。
少年サッカーレベルだと、守備的なチームでは、自分たちのコーナーキックだというのに4人以上残っているチームもあったりする。相手のフォワードは1人だけだというのに、4人で何を用心しているというのだろうか? どんだけ恐がりなんだよって話しだ。
攻撃的なチームはマイボールになった途端に、自陣ゴール前ががら空きになったりする。将棋で言うと、自玉周辺をスカスカのままにして、敵玉を落としにかかるような戦術になる。

今回のワールドカップでの、アルゼンチン・ドイツ戦が典型なのだが、攻撃的だから得点が多い、守備的だから得点が少ない、とは限らない。むしろカウンターになった時のスカスカ度合いが大きい分、守備的な戦術をとった方のチームが多く得点したりするのが昨今の状況だ。そういえば今年のチャンピオンズリーグもそうだった。

実は、攻撃的な戦術をとっているチームの得点が少なくなる傾向もでてきている。
攻撃的であるためには速攻を捨てなければならないからだ。
一見納得できないかも知れないが、言い換えてみるとなぜそうなるのかがわかる。
速攻をするためには相手ディフェンスラインの裏にスペースがあることが必須となるが、スペースを作り出すには、自陣へ相手を引きこまなければならない。つまり、前に多数の攻撃人員を置いて敵ディフェンスを後ろへ固定化してしまうような状況をつくってはいけないのだ。これは攻撃的であるための条件と明らかに矛盾する。

そもそも「攻撃的」とは「得点を取る」こととは異なる概念だ。
「攻撃的」「守備的」というのは、戦術というよりも哲学に近い。対して「得点を取る」「失点を防ぐ」というのは合理性の範疇に入る。前者は「サッカー」について考えているのであって、後者は「勝敗」について考えている。

ブラジルのFWルイス・ファビアーノはこう言っていた。
「どんなサッカーだったかなんて、一ヶ月もすればみんな忘れてしまう。残るのは、どっちが勝ったかだけさ。だから俺は勝つことにしか興味はないね」
ブラジルはとっくに負けてしまった。なるほど、確かに今大会のブラジルのことが後々語られることはないかもしれない。ルイス・ファビアーノのサッカーを覚えている人もいないだろう。しかし、同じラウンドで負けてしまったアルゼンチンのサッカーについて、ああだこうだ語る人は世界中にいるし、それは時間が過ぎてもいなくなりはしない。決勝戦でもしスペインが負けたとしても、彼らが見せてくれたサッカーのことは、誰も忘れないだろう。

マラドーナが未だに史上最高の選手として語られ、強烈な存在感を示しているのは、史上最も勝利したからでも、最も得点したからでもない。そのことについてルイス・ファビアーノはどう思うのか、ぜひ聞いてみたいものだ。
サッカーは記録のスポーツじゃない。記憶のスポーツなのだ。

0 件のコメント:

コメントを投稿