2011年1月18日火曜日

大中華人民帝国こそが悪夢

大中華人民帝国こそが悪夢


朝日新聞 2011年 平成23年 1月8日 土曜日
オピニオン インタビュー(聞き手 オピニオン編集長 大野博人)

人類学者 エマニュエル・トッド
フランス国立人口統計学研究所員
『自由貿易は、民主主義を滅ぼす』藤原書店

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『空回りする民主主義』

自由貿易が権力握る
解決阻(はば)む超個人主義

共同体意識残る日本
アジアとの連携に道

──日本の有権者は1年4カ月前に歴史的な政権交代を起こしました。しかし、社会は相変わらず閉塞感に苛(さいな)まれています。政権交代は、問題解決につながらないのでしょうか。

「世界の主な民主義国で起きているのとまったく同じことが、日本でも起きているのです。右と左の政権や指導者の交代なんて、フランスでは常態化しているけれど、やはり政治は危機の様相を呈しています。サルコジ大統領は最も強力な大統領になると言われていたのに大したことができない。英国や米国も同じ。オバマ米大統領の無力ぶりはどうです。『黒人大統領が登場するなんて歴史的だ。何もかもが変わろうとしている』と言われて就任したのに、あまり変化をもたらしてはいません」

──各国で民主主義が機能不全に陥っているとすれば、共通の原因があるのでしょうか。

「そのとおりです。これには2つのレベルに分けた説明が必要でしょう。まず、表層部に共通して見られるのは、世界に広がっている経済についての思想です。とくに欧米や日本など先進諸国で支配的ですが、それは自由貿易こそが問題の解決策だと考えるイデオロギーです。グローバル化が進んだ今の時代に権力を握っているのは、実際のところ政治家たちではなくて、自由貿易という経済思想なのです」
「政党など政治的な仕組みがいろいろあっても違いは見かけだけ。日本でも政権は交代したけれど、支配的な思想はそのまま。だから何も変わらない。それはフランスでも英米でも同じです」

──その思想が何を引き起こしているのですか。

世界中で需要が不足し、競争が日に日に厳しくなり、不平等が広がっています。途上国に安価な労働力があると、賃金の高い先進諸国の人々は無用だとみなされる。それが社会は縮みつつあるという感覚につながっている」

  ■  ■

──国民が切実に解決を望んでいる雇用問題などに、なぜ政治は応えられないのでしょうか。

「リーマン・ショックのあと、G20などで集まった世界の指導者たちは、世界的に需要が不足していて、景気刺激策が必要だという点で一致しました。だが、それから各地で奇妙なことが起きました。刺激策は各種の指標を上向きにしたし、企業の利益も伸びた。ところが雇用と賃金は増えなかった。自由貿易という文脈の中では、各国の政策は中国やインドのような新興の国々の景気を刺激するばかりだったのです」

──グローバル化の中で一国の政府の政策は空回りしていると。

「ある新聞に載った漫画が面白かった。スーパーで2人が対話している。一人が『景気刺激策が必要だ』という。他方が『そう思うけれど、どの国の景気を?』と返す。2人の買い物カートに入っているのはメード・イン・チャイナばかり

──自由貿易が表層とすれば、その底にある問題は何ですか。

「深い精神面での変化です。ハイパー個人主義、あるいは自己愛の台頭とでも呼ぶべきものです。社会が個人というアトム(それ以上分割不可能な粒子。原子)に分解されていく現象です。その結果、国をはじめとする社会や共同体で人々が何かについていっしょになって行動するということが考えられなくなっている。社会や共同体を否定するような考え方です」

──個人の確立というのは、近代的な民主主義の基礎だったはずではないでしょうか。

「確かに逆説的です。民主主義を発明したのは、人類学的な視点から見て個人主義的傾向の強い国、米英やフランスで、共同体のきずなが強い国々ではない。そうした社会はもっと権威主義的で、歴史的にも日本やドイツはリベラル(個人中心)な民主主義になじみにくかった。けれども日本では不平等の広がりはフランスなどよりゆっくり進みました。また、欧州内でも、民主主義がより病んでいるのはドイツよりフランスです。ドイツではまだ労組が機能しているし、大衆とエリートとの断絶もフランスほどひどくない」

──民主主義を実現させた社会の基礎が今度は、民主主義をむしばみつつあるのですか。

「民主主義の普及は識字率の向上と結びついています。だれもが読み書きできるようになり、文化的にも同質性の高い社会が築かれるに至って、民主的な考え方も形成されていった。みんなで共有している何かがあるという感覚が育まれていきました」

「ところが、高等教育の普及によってかなりの数の人々が高度な教育を受けるに至り、先進諸国はかえって文化的に平等な段階からさらに抜け出していった。つまり、新たな教育格差が別の重い意味を持つようになった。私は、教育格差の広がりと民主主義の弱体化、平等という感覚の弱体化はつながっていると思う」

「教育格差が早く広がっていったのは米英やフランスでした。一方、社会のきずなが強い社会、スウェーデンやドイツ、日本ではそれほど早くはなかった」

──とはいえ、日本もやはり共同体の弱体化、民主主義の危機に苦しんでいます。

「日本社会を超個人主義的とみるのはおかしい。まだ個人と共同体の密接な関係が残っているでしょう。けれど日本にもほかの国と同様に不平等なグローバル化の影響は見られます。超個人主義を生み出したのは米国で、英仏も同じ方向に向かった。日本は外から来た思想に苦しんでいるのです」

  ■  ■

──民主主義を危機から救う道はあるのでしょうか。

「問題の表層部分についてなら、エリートたちがより知性を発揮して、経済についての考えを変えればなんとかなるでしょう。民主主義は人々のための統治のことであり、それが機能するにはエリートなんていらないと考えるのはポピュリスト(大衆迎合主義者。八方美人)たちです」

──しかし、多くの政治家やオピニオンリーダー(文化人。著名人。評論家)は自由貿易こそ諸問題の解決策と考えています。

「私は半年前まではこの点には悲観的でした。しかし最近の欧州では、経済危機について考え方が変わりつつあります。自由貿易が解決を阻んでいるということが理解され始めた。まだ非常に難しいけれど、解決が不可能ではないでしょう」

──それでも、もうひとつの問題、つまり、超個人主義や共同体の弱体化の問題は残ります。

「それは信仰の危機のようなものです。抜け出すのは非常に難しく、精神面での革命的な変化が必要です。欧州の歴史を見ると、共同体としての信仰は、キリスト教という普遍性の高い宗教の登場とともに始まりました。それが政治思想に変化し、民主主義を可能にし、政党を作り上げる力になっていった。共同体の代表的なものは国であるけれども、国民さえ一体として行動できなくなっているのは、同じ共同体に生きているという感覚の解体があるからです」

「しかし、そんな感覚が新たに築かれるには長い年月が必要。たとえば、今後数十年でみんなが信じられるようなことを人々に与える革命的な出来事は期待できそうにありません。人々は宗教も強く信じることはできなくなっています」

「とはいえ、共同体としての信仰の喪失の結果、人々を戦争に大動員するようなことはできなくなっている。危機に直面しても戦争になりそうにないならば、時間的な余裕はある。なにしろ1929年の大恐慌後にはナチスが台頭し、10年後には戦争になっていたけれど、今はそうはならない」

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──あなたは著書の中で、政治の規模と経済の規模を一致させる必要性を説いています。自由主義に対抗するため、欧州連合(EU)という単位の保護主義を唱え、それによって政治と経済の規模を近づける。それが民主主義が生き残る道だとしています。しかし、日本はどうすればいいでしょう。

「欧州政治は、フランス革命などから生まれた古典的な民主主義とは違う、複数の国による新しいタイプの民主主義です。ただ、欧州を理想化してはいけない。私が欧州の民主主義というのは、政治指導者と市民をより和解させる仕組みという程度の話です。一体化した欧州は完全な幻想です。家族構造の専門家である私の目から見れば、伝統的な家族構造と社会や政治についての考え方の間には密接な関係がありますが、ドイツの家族構造はフランスより日本にずっと近い。つまり、独仏間には日仏間と同じくらいの違いがある

アジア諸国が連携すれば、域外に対して保護主義を採り、域内での景気刺激策を可能にするEUとは別のもう一つの経済地域になれるかも知れない。もちろん、それだけでは経済と政治の空間の一致というわけにはいかないでしょう。ただ、経済問題の解決策にはなるのではないでしょうか」

「アジアの国々に文化的、経済的、宗教的な違いが存在するのは明らかです。とはいえ、それは欧州も同じです。台湾、インドネシア、フィリピン……。確かに使う文字や宗教など見える部分での相違は欧州より大きい。しかし、家族構造という深いところを見ると、そんなに違わない。違いばかりを意識するのはあまりいいことではありません

※ カッコ内の記述はゲゲ用の注釈。
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これから生まれてくる日本人のことを考えれば、最も避けるべき国際環境は、隣国である中華人民共和国が、ほぼ最新の軍備を無尽蔵に備えた軍事独裁国となっていることだろう。
兵器と軍隊・軍人は大量に備蓄しているのに、エネルギーや食料・水の備蓄が足りなくなりそうだという状況が最も危険になる。
そして砂漠化の進行状態とアフリカ・南米を含む資源リッチ地域である南半球の経済発展を観察していれば、それはほぼ確実にやってくる未来だということがわかる。

もしもそうなった時、優香人民共和国、もとい中華人民共和国の政権が、タリバンのような原理主義青年たちに掌握されたとしたら、日本にとってそれ以上の悪夢はない。

GDPの規模がどうだとか、人権がどうだとか、環境破壊がどうだとか、空洞化がどうだとか、技術流出がどうだとか、確かにそういったことも重要であることは間違いはないが、日本が最も優先すべきことは、5年後、10年後、15年後に、人口15億人を抱える超超軍事独裁共産原理主義大国『大中華人民帝国』を絶対に誕生させないことだと、私は確信している。

そのために最も簡単で、最も効果的なのは、中国人を太らせ、牙のないブタにしてしまうことだ。
そう、以前米国が日本人したように。

ブクブクと太っていく中国を指さして脅威論をわめくのはとても滑稽な姿に、私には思える。
本当に恐ろしいのは、飢えた野獣ではないか。
与えられるエサを、エサとも知らずに食いまくり、ダラダラブクブクと肥えていく生き物を、野獣と呼ぶものはいない。
エサを与えられることが当たり前になれば、そのうち芸もするように調教できる。

まあ、その過程では、これまでのどんな生き物よりも臭くて汚染された大量の糞尿をたれるだろうが、それは飼育係の責任として適切かつ清潔に処分してあげましょう。



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