2011年2月22日火曜日

青田買いしたのにと嘆(なげ)くはあああはれなり

朝日新聞 2011年(平成23年) 2月22日(火) スポーツ 

『J困った 移籍金0 海外流出 見返りなし』 より

クラブ経営にダメージ
欧州は複数年契約
国内でも同じ構造

と小見出しが続いた最後に、こういう内容でまとめられていた。

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「日本が草刈り場に」
制度上、0円移籍の悪循環を絶つ方策はないのか。
現行ルールでは、23歳以下の選手移籍に、育成補償金が導入されてはいる。
移籍元は、選手がプロ契約してから21歳まで在籍した期間に応じて、移籍先に請求できる。
J1なら1年につき800万円までだ。

海外移籍の場合も同様の仕組みがあり、欧州の主要リーグへの移籍では1年につき9万ユーロ(約1千万円)。
香川の場合、およそ4千万円がセ大阪に支払われたとされる。
しかし、今の香川の移籍金相場からすれば、極めて少ない。

日本選手は安いコストで獲得できる、というのが海外の一般的な見方。
日本協会の小倉純二会長は「日本が草刈り場だとか、選手が安いと思われてはいけない」と、複数年契約の浸透を呼びかける。
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今季2010年度末で契約満了となる、主な0円移籍選手リスト
(サッカーダイジェスト11月9日号より)

FW
前田遼一(磐田)
マルキーニョス(鹿島)
チョ・ヨンチョル(新潟)
岡崎慎司(清水)
杉本恵太(名古屋)
柳沢敦(京都)
ラファエル(大宮)
ヨンセン(清水)

MF
マルシオ・リシャルデス(新潟)
ポンテ(浦和)
二川孝広(G大阪)
中村憲剛(川崎F)
藤本淳吾(清水)
細貝萌(浦和)
関口訓充(仙台)
兵働昭弘(清水)

DF
槙野智章(広島)
伊野波雅彦(鹿島)
永田充(新潟)
徳永悠平(FC東京)
村松大輔(湘南)
ストヤノフ(広島)
市川大祐(清水)
青山直晃(清水)

GK
川口能活(磐田)


【サッカー】
香川ら「0円移籍」止まらぬ理由 Jクラブ苦悩、海外クラブ丸儲け
2011年2月2日  産経新聞より

主な日本人選手の海外移籍金
移籍時期/名前/移籍元→移籍先/移籍金額
▼2010年夏
香川真司  C大阪→ドルトムント  0円(ただし育成補償金として約4千万円)
内田篤人  鹿島→シャルケ  約1.5億円
長友佑都  FC東京→チェゼーナ  期限付き移籍(さらに完全移籍後、今冬にインテルミラノへ)
▼2010年冬
家長昭博  G大阪→マジョルカ  0円
細貝 萌  浦和→レーバークーゼン  0円(さらにアウクスブルクに期限付き移籍)
槙野智章  広島→ケルン  0円
安田理大  G大阪→フィテッセ  0円
岡崎慎司  清水→シュツットガルト  不明
▼1998年夏
中田英寿  平塚(現湘南)→ペルージャ  約4.5億円
▼2002年冬
高原直泰  磐田→ハンブルガーSV  約2.5億円

※三浦知良選手、小野伸二選手、中村俊輔選手らの名前がないあたりに、ジャパンマネーの影が……。

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どうして? と思うようなまだ若い10代の選手のプロ契約がなぜ多くなったのかの理由が、ようやくメジャーマスコミで報じられた。
それがこれだ。

「現行ルールでは、23歳以下の選手移籍に、育成補償金が導入されてはいる。
移籍元は、選手がプロ契約してから21歳まで在籍した期間に応じて、移籍先に請求できる。」

つまり、

「プロ契約してから21歳まで在籍した期間」が「育成補償金」の最重要要件なのだ。
時間を遡(さかのぼ)ることはできない以上、“取りっぱぐれる”愚(ぐ)をさける唯一の方策が、「早いプロ契約」なのだ。
逆に言えば、「早いプロ契約」=「将来の成功」を約束しているわけではない。残酷なことだが、これも大人の事情、経営上のリスク管理ということなのだ。
若い選手はこのことをちゃんと理解する必要があると私は確信している。
早いプロ契約を本当によろこんで良いのか、をちゃんと考えてからサインをするべきなのだ。

例えばガンバ大阪の宇佐美選手が未だにガンバ大阪へ留まっているのにも、この「早いプロ契約」が影響している可能性がある。
もし彼がプロ契約を交わしていなかったら、今オランダで売り出し中の宮市亮選手(オランダ1部リーグフェイエノールトに18歳で所属し、只今絶賛売り出し中!)と同等か、それ以上のセンセーションをヨーロッパに巻き起こしていたかも知れない。
あるいはレッズの原口元気選手や山田直輝選手にしても、もっと十分に体幹を鍛えてからプロデビューしていたら、今のように故障で悩まされることもなく、ただ己のプレーのレベルアップだけに集中できていたかもしれない(故障を治すことを第一に考えるなんてのは、ベテランになってからでいいのに、と、彼らを思うとき、私はとても残念な気持ちでいっぱいになる)。

いつか必ず、日本でも育成補償金の規約から「プロ契約」という文言が消え、ただ「所属したチーム」となる日がくることを信じている。
そう、オランダのように
でもその日までは、相手がJリーグの下部組織だからと、ホイホイ安易に食いつくのはあまり賢い判断だとは言えない。少なくとも、私はそう考えている。

プロ契約できたからといってもそれは人生のゴールではなく、ほんの小さな一歩に過ぎない。
ましてやJの下部に入った入れなかったなんてのは、これだけJができてからの年月も過ぎ、またチームが増えてしまった昨今となっては、六本木での合コンの席でもほとんど耳目を集めないちっぽけなエピソードに落ちぶれてしまった。

大事なのは、サッカーを心から楽しめるかであって、経歴を所属したサッカーチーム名で飾ることじゃない。
Jの下部チームへ入れなかった選手らへは、「それも海外移籍のチャンスだって考えれば楽しいじゃん」と言いたい。
本気でそう信じることができれば、自分の力でそこへ至(いた)る道を必ず見出(みいだ)すに違いない、と私は確信している。

少年サッカーに携(たずさ)わっている誠実な大人たちには、「Jのチームの大人たちは、君たちの才能を伸ばすために働いているわけではなくて、自分たちの所属するチーム運営会社の経営を良くして自分への待遇を維持向上させるために働いている。だから自分の才能を伸ばすには、自分で考えて、工夫して、トレーニングしなければだめなのだー」って、子供たちへ上手に伝えてあげて欲しい。
でもって少年サッカーに巣くい、子供の親に集(たか)るような卑屈で卑劣で卑浅な大人がもしいるとすれば─私はいないと信じたい─、柱の角に足の小指をぶつけてください。


これで、ユース年代でJデビューする選手やプロ契約する選手がたくさん増えたのに、国際大会のアジア予選では惨敗続きという実態の真の理由が、朝日新聞というメディアを通じて広く明らかになりました(中高校生プロの誕生は、若手の実力が上がったからではなくて、移籍金や育成補償金を得るためだったということ)。
さあこれからは、それを知ったたくさんの大人たちがどう考えるか、ですね。



おわり

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