2010年4月26日月曜日

価値関数と少年サッカー

人間は、増えたときよりも減ったときの方が印象に残る。
同じ一万円であっても、拾ったときよりも落としたとき、もらったときよりもあげたときの方を、いつまでも覚えている。

ヤフオクの最低落札額を見て、「これは高すぎだろ」と感じることは少なくない。
だが出品者の心理を推察すると、それが「最低落札額」である以上、その品物の価値を、出品者は、その金額以上だと考えていることがわかる。
人間は、安く売りたくないのだ。

これを人間の心が持つ「損失回避性」という。

この心理傾向の強いタイプは、

安く売るくらいなら、売れなくてもいい。
他人に得をさせるくらいなら、いまのままでいい。

となりがちだ。

つまり、

変化によって自分が「損」をするんじゃないかと過剰に心配するあまり、現状を変えることがわずかでも損につながるかもしれないのなら、いまのままでいい。

と考えてしまう。
「損」は絶対にイヤイヤイヤ。「損」をするくらいなら、ずっと今のままでいい。
こういう心理を、「現状維持バイアス」という。

また「参照点依存性」という特性も、人間は持っている。
株式売買で、2年前に買ったときの価格よりも、今年の暮れにつけたピーク価格の方を基準にしてしまうようなことだ。
現在は購入時よりも30パーセント高くなっているというのに、ピーク時よりも20パーセント下がったことにばかりこだわってしまう。「売り時を逃した」と。「ちょっと待ってくれ。今、売ったとしても、君は儲かってるじゃないか」とアドバイスしても、「いや、もうちょっと待ってみるよ。きっとまた・・・」。こうして損が膨らんでいく。

「感応度逓減性」(かんのうどていげんせい)というのもある。
一万円のお年玉も、小学生のときはあんなにうれしかったのに、中学生になるとがっかりする。
牛丼の350円と250円は大問題だが、薄型テレビの43万とんで350円と、43万とんで250円の違いなど気にもとめない。同じ100円であるというのに、そのとらえかたはまるで違う。
スケールが大きくなると、その変化への感応性が鈍くなること、それが「感応度逓減性」だ。


以上のような、人間が持つ「損得」への感じ方の特性を、見事に表現したのが「価値関数グラフ」だ。
上下から押しつぶされたS字のカーブを描き、中心の参照点から離れるほど変化は鈍くなり、またマイナスほど値が大きくなる。

少年サッカーで得点力不足に悩む指導者は、この価値関数グラフを頭の片隅において、練習メニューやコーチングの仕方を工夫してみるべきだ。
①得点力は本当に不足しているのか。
②失敗した時のことを意識させてしまうような方法、あるいは声かけをしていないか。
③足での得点が入らなくなったと感じたら、頭での得点メニューを増やして、参照点を変えてみる。

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