2011年4月9日土曜日

統計に騙されない。

統計に騙されない。


典型的な「統計に騙されている人」の書いた記事があったので紹介します。
騙されないためのポイントには【注意!】として、コメントをつけてあります。

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放射線の影響 追跡60年 [11/04/07]
編集委員・高橋真理子




放射線は人体にどんな影響を与えるのか。広島・長崎の被爆者たちの健康調査で多くのことが分かっている。大きな犠牲から得られたデータは、世界の放射線防護対策の基礎となっている。

健康調査は、1947年に米国が設けた原爆傷害調査委員会(ABCC)が始め、75年から日米共同運営の「放射線影響研究所(放影研)」が引き継いだ。

被爆者9万4千人と、そうでない2万7千人を生涯にわたり追跡調査。うち約2万人は2年に1度の健康診断や生活習慣調査を続けている。

─【注意!】─
まず「被爆」と「被曝」を誤読しないことです。次に、調査対象の数がおよそ3.5倍も違うこと、さらに定期的な観察をしているのはその内のわずか2割にも満たない調査であるということを、ちゃんと理解する必要があります。また、ここに記載はありませんが、その定期的な観察をしているかなりの割合は、「被爆者」側に偏っていると推察されます(ちゃんと半々だったらごめんなさい)。
これがどういうことを意味するかといいますと、「数をたくさん調べれば、何かが見つかる確率は高くなる」「よく調べた方からは、何かが見つかりやすい」ということなんです。ですからこういう調査では、調査対象と比較対象の条件をそろえることが大前提になります。
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放影研の大久保利晃理事長は「系統的な長期調査で、世界が必要とするデータを発信できた」と話す。国際放射線防護委員会(ICRP)の委員で大分県立看護科学大の甲斐倫明教授も「放射線のリスク推定で決定的な役割を果たすのが放影研のデータ。ICRPもこれを基本に計算している」と説明する。

長年の調査でわかった主なポイントは次の通りだ。



◇広島・長崎調査、世界の防護策の基礎

■がん

被曝(ひ・ばく)後10年目ぐらいから乳がんや胃がん、大腸がん、肺がんなどにかかる人が増え始める。統計で、被曝していない人より多いと明確なのは200ミリシーベルト以上浴びた場合だけだ。通常、30歳から70歳までにがんになる人は30%。30歳で200ミリシーベルト浴びると33%に上がる。

100ミリシーベルトの場合は、計算上は31・5%だが、追跡調査では判別できない。喫煙の有無による差の方が大きく、少量の放射線による差は統計をとっても数字に表れないからだ。

被曝年齢が低いほどリスクは大きく、女性は男性よりリスクが若干大きいことはわかっている。

─【注意!】─
まず、ここに登場する「時間」に注意してください。
「被曝後10年目」と「30歳から70歳まで」と、ふたつ出て来ます。
もし外部被曝による遺伝子変異の影響を見るならば、10年はあまりにも長い期間です。
人間を形作る60兆個もの細胞は、長くても6年ほどで入れ替わるとされています(最短説は6カ月、一般的には2年くらいだろうという説が多いです)。
がんの成長速度を考慮したとしても、発生の原因を10年前に求めるのは、可能性としては考えられますがいかがなものでしょうか。それよりも「10年? 30~70歳? 人間そんなに生きてたんなら他にもいろいろあるでしょ」という要因追求に、どう返すのか、そっちの方に興味があります。
もう一点は、罹患するがんの種類が「乳がん、胃がん、大腸がん、肺がん」といったものであることです。ふつう放射線による影響というと、甲状腺、リンパ腺、白血球などが語られることが多いのですが、ここではそうではありません。
最後に「31・5%」と「33%」の違いです。前者については、「調査では判別できない」と書かれています。このあたりに、なぜ「30歳から70歳まで」なのかの答えがあるように感じます。もしかすると、この幅をとってようやく「判別」できる数値が取れたと言うことなのではないか(まったく差がないではこの調査をした団体の存在意義が問われる、と考える調査員・研究者がいたかも)……まあうがった見方なのでしょうが。
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■白血病

被曝から2年で増え始め、子どもは同年齢の発症率の数倍に増えた。6~8年後から患者は減り始め、20年ほどで日本人の平均レベルになった。発症率の増加は大きいが、比較的まれな病気で、被曝で増えた患者はがんに比べ少ない。

─【注意!】─
この記事の筆者はご存じないようですが、白血病はがん(悪性腫瘍)です。血液のがん(主として白血球、まれに赤血球、血小板など)です。血球を作る細胞(幹細胞)が、骨髄中でがん化して無制限に増殖し続ける病気です。
放射線被曝による影響が、他のがん(上皮型)よりも少ないというのは、定説と逆の結論になるように思えます。そういう理解でいいのでしょうか?
そもそも、調査対象者の中に「子ども」はどれくらいいたのでしょう。
「増えた」という点についてはそうだろうと私も思いますが、その「数倍」というのが何倍なのか気になります。記事中に具体的な数字があったらよかったのですが。
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■胎児

妊娠何週目の被曝かで大きな差があった。一番影響が大きかったのが、妊娠8週から15週。被曝線量が多いほど知的障害児が生まれる割合が増えた。「200ミリシーベルトまでは発生頻度が上がるようには見えない」と放影研の中村典(のり)主席研究員は言う。16週から25週では500ミリシーベルトを超えてから頻度が増え、0週から7週と26週以降では影響は見られなかった。

─【注意!】─
1945年8月6日(広島)、9日(長崎)の8~15週間前、つまり2~4カ月前に、若くて健康なご主人と暮らすことのできていたご婦人が、果たして何人いたのかということです。戦争末期の当時は、学徒動員をしなければならなかったくらい、「若くて健康な男性」が日本国内に乏しかったのです。残っていたのは、かなり基準が下げられた徴兵身体検査でも“不合格”とされた男ばかりなはずです。母体の栄養状態も良くなかったでしょうし、ストレスや肉体疲労も半端ではなかったはずです。そしてまた同じことですが、調査対象の数も問題です。「被曝線量が多いほど知的障害児が生まれる割合が増えた」と言えるほどのサンプルをそろえられたとは、そう簡単に信じることができないのですが、そのへんについてどうなっているのでしょう。
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■遺伝

親が被爆者の「被爆二世」について、死産や奇形、染色体異常の頻度に親の被曝の影響は見られなかった。小学生になったときの身長、体重などにも影響はなかった。2007年には、糖尿病や高血圧など6種類の生活習慣病について約1万2千人の健康診断結果が報告され、「遺伝的影響は見られない」と結論づけられた。

─【注意!】─
チェルノブイリについて語られるときに必ず登場する「恐ろしいエピローグ」を真っ向から否定する内容が、はっきりと記載されています。

「親が被爆者の『被爆二世』について、死産や奇形、染色体異常の頻度に親の被曝の影響は見られなかった。」

しかし、となると気になってくるのが「白血病」や「知的障害」は増加するのに、「死産、奇形、染色体異常」は増加しない、という調査結果と、それについての結論です。
ここに書かれていることは要するに、長期に渡って広島と長崎の被爆者を調べた結果、被曝による肉体的健康への影響ははない(これが言い過ぎだとすれば、少なくとも「明白ではない」とは言えます)、ということだとしか読み取れません。
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                      ◇

ただ、原爆は一度に放射線を浴びており、事故などによる比較的低いレベルの放射線を長期間受ける場合の健康被害は分かってないことも多い。

■キーマーク■

被爆と被曝
原爆の被害を受けるのが被爆。放射線にさらされることは被曝と書く。被爆者の放射線被曝量を推定し、健康影響との関係が調べられてきた。

               ◇         ◇

《筆者の高橋真理子から》

3月11日以来、放射線の人体への影響について多くの記事が紙面に出ました。「低い線量なら心配はいらない」という専門家の談話も何度か載りました。

では、低い線量とはどれだけなのか? 資料を見てみただけでは、1ミリシーベルトから250ミリシーベルトまで、いろいろな数字が出てきます。専門家に聞いても「いろいろな場合があって一概にはいえません・・・」という説明が返ってくるだけ。ただ、誰もが、人間に対する影響で一番しっかりしたデータがとれているのは広島・長崎の被爆者調査だと言いました。

それなら、広島・長崎のデータから今わかっていることを知りたい。たとえ様々な限界があるとしても、限界も含めて詳しく理解したい。そんな思いで、放射線影響研究所の中村典・主席研究員の助けを借りながら、膨大な研究成果の中から私が大事だと考えた四つのポイントについてまとめたのが今回の記事です。

放影研は日米共同運営の研究機関です。大久保利晃理事長は「WHOもIAEAも研究機関ではありません。でも、国際的な研究センターは必要です。放影研が国際機関の一部へと発展することを目指していきたい」と話していました。

-------------------------記事引用終わり-----------------------------

でもってこれ↓は、保険の仕組みを説明するサイトにあった「がん保険」についての箇所。


ガンの発生率の話


数字の羅列で頭の痛い人も多いでしょうから、要点をまとめます。

当然の事ながら、毎年の死亡率よりガンに新たにかかる率のが低い。
60才未満での罹患率は意外な程低く、0.3%以下。
5年単位でみても、罹患率は60歳未満の場合は低い。
実に罹患数の90%が60歳以上である。
はい…自分自身意外なデータ分析結果となりました。
…想像以上に…低いもんですねぇ、ガン発生率とは。
当然、「ヘッジなんぞ取る必要はないよ」とまではいいませんが、過剰にガンを心配するのはいかがなものかな、と素朴に思いました。
さらに、上皮内ガンの割合まで調べあげようかと思いましたが…ここで力つきました(笑)

また、いつかここにupする事でしょう。

当然かもしれないですが…「死亡確率よりも、ガン発生確率のが低い」という事だけでも覚えておいたら、案外保険選びの参考になる…かも?
ガンについて「ガン、なったら心配ですよ~」等と保険屋にいわれた際に、「じゃぁ、実際の罹患数ってどのくらいなのよ?」と突っ込んでみると面白いかも。
はい…まともな答えがかえってくる事なんぞ、まずないでしょう(笑)
********************サイト引用終わり***********************
統計上ここで明らかにされているのは、

自分が死ぬ確率 > 自分ががんで死ぬ確率

ということではなく(これは当たり前。死因には他の病気も、事故も事件も災害も、まだまだいろいろあるのですから)、

自分が死ぬ確率 > 自分ががんになる確率 > 自分ががんで死ぬ確率

だということなのです。これが目から鱗でした。

朝日の記事については、字数が限られている中での記述だったので、筆者の意図を私が読み取り違えているのかもしれません。
でも、「統計学の基本」を意識してから素直に御記事を読むと、私は上記のような疑問を抱かずにはいられないということです。

私が死ぬ確率については、

80-90歳 95パーセント
70-80歳 85パーセント
60-70歳 70パーセント
50-60歳 30パーセント
40-50歳 10パーセント
30-40歳  5パーセント
 0-30歳 0.1パーセント

といったところでしょうか。60-70歳が70パーセントというのは少々高いような気もしますが、こんなところかなという気もします。
生活していて「健康に生きよう」「長寿のためにがんばろう」というのは、要は60-70歳で30パーセント側に入りたいという意味です。いや「長寿」というからには、70-80歳での15パーセント側、80-90歳での5パーセント側に、入りたいということなのでしょう。
でも、どんな人間であっても、死なない確率は0パーセントです。
どんなに長生きをしたとしても、死んだ後のことはわかりません。それは70歳で死のうが、99歳で死のうが同じことです。
ずっと健康で長生きしたいと願うのは、誰よりも先に生まれて、誰よりも後に死にたいと望むようなもので、滑稽です。
誰かが生まれるためには親が先に生まれていなければならないのですし、自分が最後に死んだかどうかなんて自分にはわからないのですから。

放射線の怖さとは、突き詰めれば「得体が知れない」ということになるのではないでしょうか。
得体が知れないもののせいで死にたくない、だから怖い。
確率的には、車にはねられたり、流感にかかったり、激しい食中毒になって命を落とす方がはるかに高いのに、私たちは放射線による健康被害の方を怖がってしまう。
賭けてもいいですけど、今後30年間で、太平洋岸の魚介類を食したことによる被曝で死亡する人はひとりもでませんけど、フグを含む魚介類の食中毒で命を落とす人は三桁になるでしょう。

必要のない放射線には、当たらなければ当たらないほどいいに越したことはないですけど、政府の対応や報道各社の扱い方には、非常に問題があると思っています。
だって日本には、WHOの放射線基準なんて鼻くそみたいな温泉地がいくらでもあるんですから。

広島長崎での研究がちゃんとあるんですから、その結果を率直に教育していれば、こんなパニックにはならなかったのになあ、と私は残念に思っています。


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