2011年3月27日日曜日

津波には勝てない。

【津波とケンカしても勝てない】

防波堤・防潮堤が有効なのは小規模津波にだけであって、本当に防ぎたいはずの大津波に対して、防潮堤はかえって被害を大きくするということが明らかになった。

防潮堤があったがために避難が遅れた人は多かったし、また防潮堤の門を閉めるために動員されて被災した青年団の人たちも大勢いた。もっとも良くなかったのは、引き波に対して防潮堤が堰のような働きをしてしまい、水の勢いが止まって滞留し、防潮堤を越えた地域の水位を過剰に高める悪循環に陥ってしまったことだ。
もし防潮堤がなければ、津波の到達範囲は広くなっただろうが、中心部分の水位ははるかに低くなっていたはずだ。そうした条件下であったなら、今回でも鉄筋3階以上に避難した人たちの多くは助かっていたかもしれない。

防潮堤の良くないところはまだある。

それは街作りへの影響だ。

防潮堤があると、道路や工場などが防潮堤に沿うような形で設置されがちになる。
檻があると猛獣のすぐそばまで近づいてしまうのと同じ理屈で、何かのはずみで檻が壊れた時には逃げ切れなくなってしまう。

最後に、これはある意味で仕方のないことでもあるのだが、堤防があると深いまま(水量を保ったまま、勢いも維持される)街のすぐそばまで津波が来れてしまうという、構造上の問題だ。


港湾壁や堤防壁は、水面に対してほぼ垂直に切り立っている。

ここへ大量の水が一気に押し寄せると、水量の持つエネルギーが保持されたまま、街へ激突することになる。

同じ高度からの同じバケツ一杯の水であっても、広く撒(ま)くように流した場合と、一度に真上から落とした場合とでは破壊力が違うように、段々と浅くなっていくという本来の海岸線や河川敷の構造と、垂直に切り立った枠にはめ込んだ人工的な構造とでは、やはり対自然となった時の応用力が違うということなのだろう。




構造上の問題はまだある。

向かってくる物に対してそれを正面から跳ね返そうと設計してあるので、その設計意図通りに「外側から」の力には強いが、逆に「内側から」の力には脆(もろ)くなってしまうのだ。



今回も、想像するに、海側から襲ってきた津波には何とか耐えたかもしれない防潮堤・防波堤も、その想定水位を超えて壁を乗りこえられ、陸地側に大量にたまってしまった海水からの力には耐えられなかったに違いない。堤防が決壊すれば、ただでさえ強力な「引き波」の力が自然本来のものの何倍にも増幅されてしまう。ザザザザーと引いていくのが自然の引き波であるのに、その引き波をため込むだけため込んだあげく、まるで鉄砲水か土石流のように解放するのだから、その破壊力たるやどんな科学者であっても事前には想定できない、強烈なものとなっただろうと、私は推察している。

防御壁的な発想での津波対策はもはや過去のもの。終わったのだ。

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