2011年3月1日火曜日

また会う日まで

註釈─この記事は当初2011年2月6日付でした─


北足立郡北部からただ一人レッズジュニアユースへ加入する子(こんなにもったいぶらなくても、あの子しかいないんですけどね)を見に、上尾平方スポーツ広場まで足を伸ばしました。
この世代ももう引退、彼が北足立郡北部でプレーするのもおそらくこの大会(上尾市中央ライオンズクラブ旗争奪サッカー大会 Aクラス)が最後だろうと思うので言います。
彼はすばらしい可能性を、間違いなく秘めています。
身体能力のポテンシャルはもとより、彼は人間的にもすばらしい。チームメイトからも信頼されているし、彼もチームのことを考えることができる。本人の力だけではなく、これまで彼にかかわってきた周囲の大人たちも立派な方々だったのだろうというとこが、彼を通して伝わってきます。
レッズGKの加藤順大(かとうのぶひろ)選手も、彼と同じ西上尾地区出身らしいので、ぜひ続いてトップまで上がって欲しい逸材です。それどころか、実は秘かに、日本フル代表になれる可能性さえ小さくない、とさえ私は思っています。何しろ、彼の能力は、まだほんの入口のその手前までしか開発されていないと確信しているからです。

それはそうと、今日会場(平方スポーツ広場)で気になる話を耳にしました。
お目当ての彼がいるチームの対戦相手が、偶然にも、私が少年サッカーへ関心を向けるきっかけとなったAGミラン(仮名)(※3)だったのです。が、いつも試合に出ているメンバーのうち、数人の姿が見えません。ベンチにもいないようです。
近くにいた、何となくいろんな事情に詳しそうな、おそらく父母の方(口ぶりからは第三者的立場にあるような印象を受けました)に、それとなくそのあたりの話を振ってみると、びっくりするような返答を得られました。

その方のお話では、中学から自チーム(つまりAGミラン)系列のジュニアユースではない、他のジュニアユースに行く子は“クビ”になった、とのことでした。だから、試合に出ていないどころか、もうこのチームの選手ではない、のだそうです。そして、AGミランは毎年そういうことをしているのだ(※1)、とも聞きました。
そんなことがあるのかと、正直憤慨しました。
子供に対して大人のすることか! それも6年間、いやそれ以上の期間ずっと指導してきた子どもに対して、まがりなりにも教育者・指導者のすることなのか、と。
サッカーを通じてずっと同じ時間を成長してきた子供たちの別れを、そんな形にしてしまう「チーム経営者の横暴」(※2)に、怒りさえ感じました。お前らごときに、子供たちの人生へそんな傷を残す権利などない!

とここまで考えてふと冷静になろうと自分へ問いかけました。
でも、もしかすると少年サッカー界の慣例が、そういうものなのかもしれない、と。
確かに、大人が思い悩むほど、子供らは深刻に受けとめていなかったりすることはたくさんあります。大人が子どもの心情を想像するときにはどうしても自分自身のノスタルジックな想いがオーバーラップしてしまい、過剰にセンシティブに扱いがちになったりしてしまい、かえって事態を複雑にしてしまうことも少なくありません。

イタリアセリエAのチェゼーナからインテルに移籍した長友選手も、聞いたその翌日には新チームに合流していたらしいですし、これから世界で活躍していかなければならない未来の人材なら、こんな事でうじうじしていてはダメなのだ!──それは確かでしょう。

今回のAGミランの「クビ」も、視点を変えれば、次に行くチームへの準備に早く入ることができる、ととらえることもできます。

その時に忘れてはならないのが、新チームの方へもちゃんと事情を伝えることです。来期から自分のチームで活躍して欲しい選手に練習する環境がなくなったことを知れば、ふつうのレベル以上のコーチなら、あるいはそれなりに経験を積んでいる指導者なら、何かしらの“アドバイス(大人の知恵とも言う)”を持っていると思います。自主練習しようとグラウンドへ行ったら、偶然にも新チームの練習とかち合ってしまったので「丁度いいから」と一緒にサッカーをした、なんてこともないとは限らないのですから。
レベルが高く、当然競争も厳しい(であろう)新チームに合流する前に、大きなケガでもしたら取り返しのつかないことにもなりかねないので、そういうトラブルを避けるためにも、チームを退団させたのだ、ととらえることもできます(下世話な話になりますが……その子が大成すれば、巡り巡って出身チームの宣伝になる、という目論見も立たないわけではないですしね)。

実際のところはどうなのか、そんなことを私には知る術などありません。ですが、どうせならどんなことでも良い方に見えるように見てみようではありませんか。少なくとも私は、そう心がけています(いたらぬ人間なので、正直なかなか難しいですが……)。


最後に、もうAGミランから旅立ってしまった君たちへ
お礼の気持ちも込めて、こう伝えたい。

サッカーを続けていれば、いつかきっとどこかでまた会えるさ。
卒団は別れじゃない。
君たちをつないでいるのはチームの名前じゃなくてサッカーボールなのだから。



いつかどこかのピッチで「いいプレーだ」とふと目を止めた選手が、成長した君たちの誰かであると気づくその瞬間を、いまから私はとても楽しみにしています。



I look forward to seeing you again.
(I'm looking forward to seeing you again.)






【訂正と補足】
コメントを読み、私なりに思うところがあったので訂正及び補足を記させていただきます。

※1 私が耳にしたお話は、事実と異なる可能性がかなりある噂話程度のものだったのかもしれません。この件について本当に事の真偽をお知りになりたい方は、当該貴クラブへ直接問い合わせてみる等の確認手段を取られることをお奨めします。

※2 コメントに紹介されているAGミラン経営母体クラブの代表者様の言(げん)
「(前略)どのような形であれ大学生になっても社会人になってもサッカーを続けろ。そして仲間がいるクラブにいつでも戻ってこい。」
は、教育者として実に尊敬に値する姿勢だと、私も賛同いたします。
また、「実際に、中学校の部活動が終わってから高校の部活動が始まるまでの間に練習に来るOBがいたり、高校生大学生社会人になったOBが頻繁に遊びにきたりしています。」というのが貴クラブの雰囲気であるならば、子供たちの成長の場としてまさに理想的な環境であるとも思います。教師や親に相談できないまま、学校や家庭で道に迷いそうになったり、倒れそうになった子供たちが、貴クラブの存在によって人知れず救われていた、というケースも実は多々あるのではないでしょうか。

最後になりましたが、この度は貴重な情報を寄せて頂き感謝しております。
おかげさまで、これからもAGミランというチームのサッカーを、素直な目で楽しむことができます。
ありがとうございました。



★ もう一通のコメントについて ★

私が耳にしたお話も、そのような内容だったように記憶しています。
よろしかったら、愚ブログの下記ページもお読み頂けたらワイワイです。もとい、さいわいです。

「どうして私ばかり」スパイラル


※3 最近はからずも偶然、幼少年を対象とした体育・スポーツクラブの経営実態について詳細なレクチャーを受ける機会を得、またそのとき見聞きした情報を補完する意味もあって自分でも調査・分析してみた結果、3月1日より当記事内においては当該チーム名を「(仮名)」とすることにしました。なかなか厳しい業界ですが、どんなに苦しくてもふんばって、未就学段階にある子供たちがサッカーを楽しむことができる場を提供し続けて欲しいからです。


同業界についての私なりの考えについては、また別の機会にでも書きたいと思っています。
 
 
 
最後に、年度末なんかぶっ飛ばせ! です。
 
 
 
 
 
終わり(は、始まりです)

2 件のコメント:

  1. 管理人様

     管理人様のサッカーに対する知見と慧眼に触れながら、いつも楽しく読ませていただいています。これからも北足立北部地区の少年サッカーについていろいろな視点から執筆していただけることを楽しみにしています。

     私は、息子がユベントスJFCに小学生から中学卒業までお世話になり、そのまま私までもがOBとしてクラブに携わることでお世話になり続けている者です。
     先般のユベントスJFCに関する文章で、私の知っていることと異なる部分がありました。
     もちろん私は当事者ではなくOBの立場ですので、本当のところはわかりませんが、私の知っていることをお伝えさせていただければと、失礼かとは思いましたが寄稿させていただきます。

     私はユベントスJFCの卒団式に毎年招待していただき出席していますが、このような理由により途中で退団する選手がいることは初めてのことです。
     中学生年代の朝日ジュシアユースと小学生年代のユベントスJFCは同一クラブですので、数多くの選手がユベントスJFCから朝日ジュニアユースに進んでいます。しかし、あたりまえのことですが選手は自由に移籍することができますから、ユベントスJFCから中学校の部活や他クラブへ進む選手がいます。
    途中で退団することになった理由は、他クラブへ行くこと自体が問題なのではなく、クラブに事前に話をすることなく他クラブへ行くことを決めたことが理由と聞いています。
     県内のクラブジュニアユースにおいては、ユベントスJFCと朝日ジュニアユースは同一クラブであることは、クラブ登録をしていることから周知のことであり、ユベントスJFCの選手が他クラブへ進むときは、公式にせよ非公式にせよクラブ間で話しをすることになるのですから、事前にクラブに話をしなかったことについて私としては残念でなりません。

     クラブの代表は、「どのレベルでもいいから高校サッカーをレギュラーで活躍できる選手になれ。どのような形であれ大学生になっても社会人になってもサッカーを続けろ。そして仲間がいるクラブにいつでも戻ってこい。」と言っています。実際に、中学校の部活動が終わってから高校の部活動が始まるまでの間に練習に来るOBがいたり、高校生大学生社会人になったOBが頻繁に遊びにきたりしています。
     私は、このクラブは、プロを目指すまたはひたすらに上を目指すクラブというよりは、サッカーの指導を通して、一生の仲間をつくり、一生懸命頑張ることを目指しているのではないかと感じています。
     
     いろいろな目指すものも持っている選手がいて、いろいろな考え方のクラブがある。それは健全で素晴らしいことなのですが、目指すものや考え方が交錯したときに生じた些細なズレが増幅して今回のような事態になってしまうことがあります。選手にとってもクラブにとっても不幸なことだったと思います。
     選手と選手の父母の皆さんが、指導者や代表ともっとオープンに話ができるようなクラブになってくれればいいなと願っています。

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  2. 最初から「違うJrユースに行くならやめろ」と言われてました。なのでやめる覚悟でセレクションに行ったそうです。その後代表から「中学はどうする?怒らないから言ってみな?」と子供達が聞かれ、本当のことを言ったら「他に影響が出るからやめてくれ」と言われたそうです。
    代表が話を聞くようには思えません。多くの父兄は代表のいい加減さと人間性に呆れています。
    多くのチーム関係者、子供達がいると思うのでこれ以上は記載しませんが・・・

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