2011年5月29日日曜日

バルセロナの弱点はここ

2010-2011UEFA Champions League Final(マンチェスターユナイテッド × FC バルセロナ) をフジテレビで観戦した。

以前に、「サッカーをより楽しく観る方法 ─テレビ観戦編─ 」でも書いたように、音声を消して観戦した。
ほとんど二日酔い状態の上に半覚醒脳での観戦であったこともあり、これから書くことについての責任能力は法廷でも重要焦点となる程度のものであったことを、最初に提示しておく。


【1 今試合のマンUは、バルサにしてみれば一番オイシイ相手だった】

事前の分析でも、バルサ側にはそういう認識があったのだろう。だから試合前のインタビューなどで、メッシなんかが一生懸命マンUを持ち上げていたのだ。マンUがマンUらしいサッカーをしてくれるように。その方が自分たちには好都合だから。

【2 マンUのどこが美味しかったのか】

サイドアタッカーがいないことと自己評価が高いこと、これに尽きる。
今のバルサが苦手とするのは、ベスト布陣のトットナムみたいなチームであって、現在のマンUはその対極に近い。

【3 それはなぜ?】

バルサにはスピードのある選手がいない。それにショートパスを多用するために、選手間の距離が短い。つまり、最終ラインの後ろには、どうしてもスペースが生まれてしまう。そこをわかっていてもやられる武器(レノンやベイルのようなスピード、そしてクラウチの高さなど)で突かれると厳しくなる。対応しようとして選手間の距離が広がると、自分たちのサッカーもできなくなるという悪循環に陥ってしまう。

【4 マンUに打つ手はなかったのか】

圧倒的なFWがいない時点で、マンUに打つ手はなかった。
マンUのファーガソン監督は、中盤の強化よりもむしろ強力なFWとスピードのあるサイドアタッカー獲得を、選手補強の担当者へ厳命しているに違いない。

【5 中盤を支配されたことが敗因じゃないの?】

バルサの戦術は、中盤を支配すること、にあるんじゃなくて、支配できる地域に中盤を形成すること、がベースになっている。
だから対戦相手や戦況によって、いわゆる中盤(相手から奪ったボールを集め、キープして状況を整え、攻撃を仕掛ける起点となる場所。戦争でいうところの基地)のある位置──チャビ、イニエスタ、メッシらがボールに絡む地域──は変わってくる。
逆に言うと、バルサの戦術においては、どんな相手との戦いであっても、チャビ、イニエスタ、メッシらが守備をし続けるような状況は起こりえないということ。これは優劣の問題ではなく、戦術的な選択の問題だという点に気付けば、理解できるはず。

【6 現バルサはサッカー史上最強だよね】

それはない。
現バルサのストロングポイントである中盤を取ってみても、代表チームで比較するなら、プラティニのフランス代表やジーコのブラジル代表には遠く及ばないし、単独チームで比較してもバレージ、フリット、ファンバステンの頃のACミランや98/99シーズン3冠時のマンUよりも強力かと問われて、「YES」と答えるサッカーファンはそれほどいないだろう。チームとしての総合力比較となればなおさらだ。

【7 じゃあなんで今期のバルサは無敵だったの?】

2010FIFAワールドカップ南アフリカ大会で明らかになったように、今、世界のサッカー界にはタレントが枯渇している。
スポーツ医学が発達したせいなのか、グローバルマネジメント企業隆盛(代理人の交渉力強化)の弊害なのか、チーム経営に投資ビジネスがくい込んできた影響なのか、何が原因なのかはっきり「コレだ!」とは言えないが、とにかく選手寿命が、世紀の変わり目を境に劇的に伸びている。特に名前の売れたトップ選手ほどその傾向は顕著に見られる。その反動として、新しい才能が開花する場を奪われているように私には見える。
タレントが少なくなった※結果、英独以外の、欧州南米の各国リーグは停滞している。国内リーグの停滞は、リーグ全体のレベルを低下させる。したがって、バルサが無敵だったというよりも、他のチームのレベルが低下したというあたりが真相なのではないだろうか。

※ 「天才」という表現のハードルが下がった、いや価値が暴落したと見ることもできる。能力で明確に差別化できるまで、育成に時間をかけられなくなったのだろう。それで仕方なく、促成栽培早期出荷するしかなくなり「天才」が毎年各国各世代に誕生することになったのだ。アフリカ出身の選手も、なんだか小粒な優等生ばっかりになってきたし、つまらんなあ。

【8 レベルが低下? 信じられないんですけど】

サッカーのレベルを見るのに便利なマーカーのひとつが、ゴールキーパーだ。
リーグ、世代、チーム、どういうセグメントであってもサッカーのレベルが上がると、自然といいゴールキーパーも育つ。
今現在、トップクラスのゴールキーパーというと誰になるだろうか?

【9 でもバルサのスタイルは完璧でしょ】

あれはFCバルセロナのスタイル※じゃなくて、チャビ・イニエスタ・メッシのスタイル。
アルゼンチン代表でメッシがまったく輝けず、チャビとイニエスタはスペイン代表でそこそこ輝けているという事実がそれを証明している。
アルゼンチン代表にチャビかイニエスタのどちらかがいたら、メッシも違っていたはずだ。
これもチーム・選手・戦術の優劣の問題ではなく、組合せの問題なのだ。
バルセロナにとって現在進行中の問題は、チャビ→イニエスタ→メッシ→?の答えが見つかっていない点だろう。
チャビ・イニエスタ・メッシと連なる系譜の後継者が途絶えれば、バルサも現在のスタイルを変えざるを得なくなる。

※ バルサ本来の伝統的スタイルは、徹底的にサイドを使って崩すサッカー。バルサのサポも、サイドでの1対1を闘牛を見るかのように応援してきた。これはまったくの想像だけど、昔のようなスタイルを望んでいるバルササポも、地元では少なくないのではないだろうか。

【10 ひねくれてる】

前にどこかで「センス」について書いたが、要するに、私のサッカー観ってのはそういうことだってこと。それだけのこと。
今朝のCL決勝戦を見て、子供たちはどの選手のマネをしたいと思っただろうか?
バルセロナがやったようなサッカーをしたい、と思う子はいても、誰それ選手のマネをしたいと思った子は少ないのではないだろうか。
まあこれは私の想像なので、もしかすると世間のサッカー少年たちは、
「俺、ビクトール・バルデスになる!」「僕はブスケツ!」「おいらキャリック!」「おいどんはバレンシア」「エブラ最高!」
みたいなことになっているのかもしれないが、もしそうなら己の世間知らずを恥じたい。

【11 何が言いたいわけ?】

バルサだろうがマンUだろうが、それを日本から日本人が、どっちが上だ下だと言い争っても空しいだけで、だったら両チームの良いところ悪いところを分析する方が面白いぞって俺は確信してるってこと。
それにせっかく極東の島国からヨーロッパリーグの外国チームを応援するのなら、メジャーで強いところよりも、マイナーなチームを応援しませんかってこと。

──です。


【参照1】
ブラジルに見る「決定力」育成法
ユース出身は使えない
ところ変われば、評価も変わる

【参照2】
バルサの弱点はここ
対バルサ戦略~偽ファーガソン編~
バルサをマネる3つのポイント
昔のバルサはこうだった
バルサの育成投資方針
バルサ5-0レアルの動画
昨年度(09-10シーズン)CLでのFCバルセロナ評
2009-2010CL準決勝インテル×バルサ第1戦
イニエスタの作り方
FCバルセロナの哲学


あしなが育英会 遺児奨学金「あしながさん」 継続寄付

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