2001年と2006年の記事だが、少年サッカーにたずさわる大人たちは一読する義務がある内容だ。
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http://www.nhk.or.jp/special/libraly/01/l0004/l0401s.html
●イタリアにおけるアフリカ選手の青田買いについて
イタリアの移籍ビジネスは、アフリカにまで拡大し、18歳以下の未成年選手が取引対象になっている現実がある。
1999年、コートジボワールからやってきた14歳のドゥンガニ少年のイタリアでの違法な取引が、「人身売買」の不祥事として一大スキャンダルになった。
≪主な登場人物≫
・ ドメニコ・リッチ
ベルギー・ブリュッセルにあるアフリカン・フットボール・マネージメント社長。
アフリカ選手を専門にあつかうエージェントで、現在、ガーナなどアフリカ5ケ国と
提携している。
・ サリム・バドブリ
ガーナの新興クラブ「インターミラス」のオーナー。
クラブが育成したオスマン・アブドラ選手の所属をめぐって、イタリア人代理人
カルロ・グエルフォとイタリア・ジェノアをFIFAに提訴している。
・ フセイニ・ドゥンガニ
コートジボワール・アビジャン出身の14歳の少年。
イタリア人代理人ジョルジョ・カンテリによって、イタリア中部にある
クラブ「アレッツォ」に連れてこられ、人身売買事件としてマスコミの話題となった。
・ ルイジ・ファラスコーニ
ドゥンガニ少年のテストを担当した元アレッツォのユースコーチ。
・ ポルチェッド弁護士
イタリアサッカー協会の調査委員。ドゥンガニ事件など未成年問題の不祥事を扱う。
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http://www.diplo.jp/articles06/0606-4.html
ユース養成のメッカであるINFには、毎年1000人近い12歳前後の少年がチャンスに賭けようとやって来る。入校テスト合格者は20人ほどである。彼らを待ち受けるのは、フランス代表のキャンプ地がある国立テクニカルセンターでの3年間の寮生活だ。何人かは1年目や2年目の終わりに退学の最終通知を言い渡される。その理由はひとえにサッカーであって、生活態度の問題や、学業の不振ではない。
クラブチームは、いずれにせよ、厩舎に種馬をできるだけたくさんキープしておく方が得だということをよくわかっている。コーチたちはその職業柄、見事なボールさばきをみせる15歳の少年が、5年後にもいい成績を上げるとは限らないことを知っている。知力や筋力が追いつくとは限らない。早熟な才能を持った多くの選手が、それまで熱中してきたことがもはや遊びではないことを自覚して、みずみずしさを失っていく。リュディ・アダド、ムラド・メグニ、ジェレミー・アリアディエール、フィリップ・クリスタンヴァル、その他の大勢の「未来のスター」たちは、期待されていた実力の10分の1も示せずにいる。まだ「プロ」になってもいないのに、自分の名前やプレー、キャリアが一人歩きをして、いいように利用され、もはや自分のものではなくなっていることに気づいてしまったに違いない。
15歳から17歳のユースフランス代表の「国際試合出場選手」ですら、成人後はなかなか日の目を見られずにいる。国際試合での国歌斉唱から3年後、「プロ」になっているのはわずか3分の1であり、多くの者は思い出話に耽ることになる。サッカーに明け暮れた幼年時代、10代の頃、そして人生のこと。それはいつしか仕事となり(大抵の場合はただ働きだ)、個人の才能は集団の中で埋没し、無邪気な称讃は親の重圧へと変わり、約束された未来は幻想に終わってしまった。
ほとんどの者のプロ生命は平均5~6年である。選手たちはまた、所属クラブを頻繁に替えるせいで、引退後に役立つような、確かな人間関係を保つことができない。選抜の決定的な基準は、能力や才能だけではない。
アフリカ系選手たちは、情報に疎く、身分をたやすく詐称され、遊びながら練習を積んできたためコストもかかっておらず(フランスの少年たちが型にはめられ、結局は「まともな」試合を少ししか経験しないのとは大違いだ)、安定株となっている。頑強で、すばらしいテクニックを備え(南米の選手が路上や浜辺でボールタッチを身につけたのと同様である)、プレーの姿勢は真剣そのものであり、発掘してきたエージェントにとっても、移籍元のクラブチームにとっても、確実に利ざやを保証してくれる。
FIFAは2001年に国際的な移籍に規制を設け、未成年のスカウトを禁止した。しかし、この規則はかいくぐられている。手始めは、年齢の詐称である。多くはFIFAの公認を受けていない専門エージェントが、未成年の身分証に年齢を2つ3つ上乗せして、合法的な移籍に見せかける。後には逆のことも行われるようになった。22、23歳の選手を18歳の期待の星だということにすれば、残りの選手生命(投資の償却期間)が伸びるため、高値で売れることになる。移籍時に育成クラブに金を払わずに済むよう、エージェントが(本人の合意のもとで)選手の身分を偽ることもある。
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幸か不幸か、日本の子供たちはヨーロッパのエージェントから相手にされていない。
だがまがりなりにも少年サッカーにたずさわる人間の大人として、たとえそれが地球の反対側でのできごとだとしても、サッカーを愛し夢をいだいている子供たちの悲劇から目を背けてはならない。
レベルが低いだとか、金持ち国の道楽だとか陰口をたたかれたとしても、この日本という国が自分たちの国であり、そしてそこでサッカーをすることのできることは、本当に幸運なことなのだと今一度確認して、また明日からサッカーにたずさわって欲しい。
今も地球の裏側には、今年の日本最優秀少年サッカー選手よりもはるかに才能に恵まれた子供が競走馬のように売り買いされ、またその隣では、走れなくなった競走馬の行く末のような人生を歩まざるを得ない、昨日までの天才少年たちが泣いている現実がある。
ワールドカップは、そういう人間たちの上に君臨している究極の大会なのだ。
そこでまた、投げやりで、いい加減で、無様な姿をもし、日本代表が晒すようなことがあったとしたら……と考えると、私は胸が苦しくなる。
最後まであきらめないで闘ってください。もうそれしか望みません。
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