2010年12月9日木曜日

エネルギータンクはひとつきり。心も体も、同じタンクを使ってる。

2010年 平成22年 12月2日(木)
朝日新聞×モーニング コラボ企画
40歳の教科書2 自分の人生を見つめ直す

メンタルレスキューインストラクター
陸上自衛隊コンバットストレスコントロール教官
下園壮太(しもぞの そうた)
1959年生まれ。『今度こそ、「うつ」から抜け出す本』大和出版。他。

若いころの自分を捨て「大人」のうつ対策を

「うつって、結局なんですか?」
これは、私がよく受ける質問です。
ぼんやりしたイメージはあるけれど、具体的な原因や症状はよくわからない。
きっとみなさんも同じ思いではないでしょうか。

結論から述べましょう。
うつとは「人が疲労しきった状態」のことである。
近年急増しているうつについて、私の答えはこのひと言に尽きます。
心が弱いとか、根性が足りないとか、そんなことはまったく関係ありません。

じゃあ「疲労しきった状態」とは、具体的にどんな状態なのか。
これは生きるためのエネルギーが空っぽになった状態だと思ってください。
休むことなく走り続けていたら、いつしかエネルギーが枯渇してしまいます。
このとき、心と体が緊急モードに切り替わり、悲しみや不安、怒りなどさまざまな感情を同時多発的に発動させる。
それがうつです。
悲しくもないのに涙が出たり、疲れているのに不安でそわそわしたり、わずかなことで激高したりと、自分の感情をコントロールできなくなる。
当然、エネルギー不足なので意欲もわきません。

そして疲労を考えるとき、大切なのは「エネルギーのタンクはひとつしかない」という認識です。
つまり、心も体も同じタンクからエネルギーを使っている。

一般に、うつとは精神が消耗して起こるものだと思われがちですが、肉体的な消耗も大きく関係しているのです。
これは40代のうつを考える上で、非常に大きなポイントとなってきます。

◆うつは「心の風邪」でなく 「心の骨折」だと考える

40代といえば仕事も増え、責任も増し、なにかとストレスの多くなる年代です。
しかも晩婚化が進んだ現在、子育てがもっとも大変な時期もここに重なる。
にもかかわらず、体力は確実に落ちてくる。
求められる仕事の量と体力とが、明らかに不釣り合いなのです。
近年、30代から40代にかけてのうつが急増していますが、私はこれを「35歳クライシス」と呼んでいます。
うつの原因究明と治療は、心と体の両面から考えていかなければなりません。

困難にぶつかったとき「我慢するんだ」「人に頼っちゃダメだ」「なんでも完璧にやらなきゃ」と頑張っていけるのは、体力にあふれた10代や20代までの話です。

もう少し大人になったら、我慢をせずに人の助けを借りて、完璧を目指さず、行き詰まったら別の道を探すこと。
これは逃げでも妥協でもありません。

人生をうまく乗り切る力こそ、大人たちに求められる「強さ」なのです。
特に、これまで気合いや根性を大事にしてきた「心の強い人」は、意識的な切り替えが必要になります。

また、うつ状態のことを「心の風邪」と呼ぶことがありますが、これは誤解を招きかねない表現でしょう。
うつは風邪ほどたやすく治るものではありません。
私はうつ状態とは「心の骨折」だと考えています。
骨折した野球選手が退院後に1シーズンかけてリハビリするように、1年単位での復調を目標にする。
焦る気持ち、休むことへの罪悪感もあるでしょう。
でも、骨がくっつかないままグラウンドへ出ても、また骨折してしまいますよね。
「大人の心」を鍛えるいい機会だと思って、時間をかけたリハビリに取り組みましょう。

(談)
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このコラムでは、2つ「なるほど」と思った箇所がありました。
ひとつは「エネルギータンク」の箇所、もうひとつは「求められる『強さ』=うまく乗り切る力」という箇所です。

前者は、練習や試合、大会へのモチベーションの持って行き方、調子の波の作り方を考えるとき、とても参考になるでしょう。
後者は、まさしくサッカーのゲームにおける、判断の基本そのものです。
「我慢をせずに人の助けを借りて、完璧を目指さず、行き詰まったら別の道を探すこと。これは逃げでも妥協でもありません。」
子供たちがこの意識を持ってゲームにのぞむことができるようになれば、その選手のスキルアップの速度は格段に上昇するでしょう。
子供にもよくわかる表現へ書き直して、子供たちひとりひとりにプレゼントしてあげて欲しいと思うくらい、的確に、ポイントをまとめた文章だと思います。

いまのバルサのサッカーなんて、本当にこのままです。

こういうコラムと出会うと、サッカーの知識を得たいからと言って、サッカーの本ばかり読んでいるのは、かえって遠回りなのかもしれないなあって思います。
サッカーの本やコラムを読んでいるだけでは、おそらくこの2つの表現を知ることはなかったでしょうから。

子供たちにも、サッカーとDSばっかやってるんじゃなくて、いろんな本を読め。特に昔の児童小説を読め。と薦めたいなあ。


以上

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