2010年12月8日水曜日

まずは転ばせてから

2010年 平成22年 12月2日(木)
朝日新聞×モーニング コラボ企画
40歳の教科書2 自分の人生を見つめ直す

NPO法人 自殺対策支援センター「ライフリンク」代表 
清水康之(しみず やすゆき)
1972年生まれ。2004年「ライフリンク」設立。


ひとごとと決め込まずに「もしや」の気持ちを


現在、日本の自殺者は12年連続で3万人を超えています(※)。
これは、毎日100人近い方々が自ら命を絶っている計算です。
しかも、未遂者はその10倍はいるとされている。
想像してください。
この国のどこかで、今日も1000人もの方々が自殺を図っているのだと。
我々はそんな社会に生きているのです。

我々ライフリンクでは、自殺者のご遺族への支援活動も行っているのですが、みなさん口をそろえて使う言葉が「まさか」です。
まさか自分の家族が、まさかお父さんが、まさかあの人が自殺するとは思わなかった、と。

私が数字を強調する理由はここにあります。
現実として年間3万人以上が自殺でなくなっている。
しかも、20代と30代の死因第1位は、事故でも病気でもなく自殺です(※)。
この現実をしっかり受けとめて、自殺に対する「まさか」を「もしかしたら」に変えてほしいのです。

また、40歳という流れでいえば、自殺者全体の4割が40~60歳の男性、つまり父親世代です(※)。
この世代の男性は、どうしても「悩みの吐露=弱さの表れ」と考えてしまい、周囲に悩みを打ち明けることが苦手です。

このとき大切なのは、近くにいる人が先に悩みを打ち明けること。
その人との関係のなかに「弱音を吐いていいんだ」「何でも相談していいんだ」という空気をつくることです。
そうすれば、相手も悩みを打ち明けやすくなるでしょう。

私はアメリカで4年間生活しましたが、彼らは道ばたで子どもが転びそうになっても、そのまま転ばせます。
そして立ち上がるときに、手を差し伸べる。
一方、日本では転ぶ前から手を差し伸べてしまいがち。
いちばん大事な「立ち上がり方」を教えないわけです。
いざ転んでしまったとき、対処法がわからないのも当然でしょう。
もっと失敗に寛容な、「立ち上がる力」をサポートする社会になるべきだと思います。

◆悩みはひとつじゃない 複合的な悩みへの対策を

自殺というと、悩みを誰にも相談できないまま死に至る、というイメージがあるかもしれません。
しかし、実際には自殺者の72%が自殺を図る前に、何らかの専門機関に相談しています。
にもかかわらず、自殺を止められない。
我々は500人以上の自殺者について綿密な調査を行い、専門家の協力を得ながら、自殺に至るまでのプロセスを分析していきました。

その結果、人は平均して四つの要因が重なって自殺に追い込まれていることがわかりました。
たとえば「失業+生活苦+多重債務+うつ病」というように、決してひとつの理由で自殺するわけじゃない。

こうなると、仮にひとつの問題が解決しても、あとの三つは残ったままで、その人を自殺の危機から完全に救うことはできません。
日本には、失業や借金、うつ病などの相談を受けつける専門機関はたくさんあるのですが、それぞれがバラバラで、うまく連携できていないことに問題があります。

そこで我々は「ライフリンクDB(http://lifelink-db.org/)」という総合検索サイトを作成しました。
さまざまな悩みについて、どこで相談を受けつけているか、所在地や条件ごとに検索・表示してくれるサイトです。
携帯電話からもアクセスできるので、ぜひ活用してください。  (談)

※出典 平成22年版自殺対策白書

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太字にしたところは、少年サッカーでの育成にも応用できる考えかただと思うんだよね。
いい教師とは、正解を教えるんじゃなく、いい質問のできる教師のこと、だというのが欧米の考え方。
日本の指導者でも常識になって欲しいと思ってます。

以上

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