2010年5月7日金曜日

これが団塊の感覚スカウティングだ!

『サッカースカウティングレポート 超一流のゲーム分析』
著者 小野剛(元日本代表コーチ) 発行 株式会カンゼン 初版 2010-02-18 価格1600
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岡田ザ・スーパー武史現日本代表監督の、カリスマ的なチームマネジメントを学びたいのなら、絶対に読むべき奇著。
p100では、ふたりの関係を見事に伝えるエピソードを著者自ら紹介している。

当時はほとんど無名であった今野泰幸…(中略)…高校卒業を控えた時点でプロチームからの誘いを1つも受けていないことを聞いた私は、当時J1のコンサドーレ札幌で監督をしていた岡田さんに電話をして…(後略)

(今野選手は2001年にコンサドーレ札幌に入団した)

要するに岡田エクセレント武史氏と著者は、スカウトたちが落とした人材を、電話一本でJリーガーにできるような間柄なのだ(まあそれ以前に、今野を落とすJのスカウト全員の無能さが大問題なのだが)。
この本には、他にも数え切れないくらい「岡田さん」「岡田監督」といった文言が記されている。どれほど著者が心酔しているのかが、読みたくなくても読み取れる。
2人で酒でも酌み交わせば、サッカー談義で熱く盛り上がることだろう。2人はうりふたつの『サッカー観』でかたく結ばれているのだから。

ところがそのサッカー観に基づく「スカウティング」の内容と、著者のサッカーや日本代表にたずさわる姿勢を知ると、暗澹とさせれてしまう。少なくとも私は「マジっすか? こんなんでいいの?」と思わずにはいられませんでした。

まず「弟子p14」という表現を使って悦に入っている感覚や

サッカーを「観る眼」は鑑定に近いかもしれません。
鑑定士は、偽物をどれだけ見ても目利きにはなれないそうです。本物をどれだけ見たかで眼が養われると聞いたことがあります。ハイレベルな本物の試合をたくさん観ているからこそ、直感的に違和感を覚えるのでしょう。p16

私自身が見えるようになったと実感したのは、かなりあとのことです。p17

といったくだりを読むと、
スカウティングってのはそんなに感覚的にやっちゃっていいもんなのか?
と心配になってきます。
ましてやこの著者は、S級ライセンス指導の重鎮らしいのです。おいおいって感じです。

では実際、どのようなスカウティングがされたのかを紹介します。
まず、スカウティングの苦労話です。
これなど典型的な、団塊世代の「昔の苦労自慢話」に思えます。さらにスポーツマンとしても、日本男児としても、胸を張れるような振る舞いとは、私には感じられませんでした。率直に言うと、軽蔑しました。

以下は、同行した同僚の話として紹介されています。

野見山さんはイラクのスタッフに捕まっていたそうです。車から引きずり出されて、そのまま胸倉をつかまれて持ち上げられたと言っていました。けれど、メモを車の座席の下に隠し、「私は通りすがりの韓国人です」と英語で言ったら、それ以上のことはされなかったようです。
オマーンをスカウティングしたときは、軍事施設に潜入した事もありました。…(中略)…さすがに許可を取りました。p22

韓国人になりすますあたりや、許可を取っているにもかかわらず「潜入」と書くあたり、私とはかなり異なる常識の持ち主なのだなあと推察しました。
堂々と「私はサッカー日本代表チームのスタッフです。練習を見学させて欲しい」と申し出れば、普通にOKが出たんじゃないかなって思います。それをいい歳して、こそこそスパイの真似事なんかやるから、怪しまれたってだけの話のように思えました。ピンチじゃないのに勝手にピンチだと合点して、それを自分史の武勇伝として本にまで書いちゃうあたりが、いかにも団塊世代って感じですごく素敵です。うちのミーちゃん(雑種)が人間だったら、確実に惚れてますね。先日も、得体の知れない臭いものにスリスリしてましたから。

ではスカウティングの報告はどのようなものなのか。
衝撃です。

どのように質問されるのかは、24ページにありました。

「それで、相手は強いのか?」p24

衝撃的な質問だとは思いませんか? アトランタ五輪のときの西野監督からの質問として紹介されています。
そして、そう聞かれた著者はどう答えたのか。それは、

「ブラジルよりも強いと思います」p178

ぶっ倒れます。ミシュランの覆面調査員らがもし「うまいのか?」「うまいと思います」レベルでガイドブックを編集してたとしても、まあご愛敬ですけど、日本代表チームでそれをやられてしまったら頭が痛くなります。

この本全体を包んでいるのは楽天的な著者の性格です。
正直、かなり羨ましい性格をされています。
有名な自称「マイアミの奇跡」の時は、

 (略)…確かにブラジルのミスでした。しかし自信を持って言えることは、日本が起こさせたミスだということ。ミスが起きるように仕向けたのです。p175

ですが、フランスワールドカップのアルゼンチン戦のこととなると、

(略)…バティストゥータの前にボールがこぼれてしまった。…(中略)…サッカーとはそういうもの。どれだけ良い形で戦っていても、どちらに幸運がもたらされるかはわからない。

となります。実に羨ましい性格だと言わざるを得ません(分析専門官としてはどうなのかな、とは思いますが)。

そして、アルゼンチンに敗れたあとの第二戦クロアチア戦で、この著者はどんなアドバイスを伝えたのか。
『絶対に負けられない戦い』への必勝アドバイスとは!

(略)…最終ラインの裏を狙っていきました。そのとき注意したのは、ボールを奪われたらすぐ切り替えて奪い返すこと。それとクサビのパスを受ける選手を孤立させないように、しっかりサポートすることでした。p237

じゃあそれまではどうしてたんだよ、と思わず突っ込みを入れたくなるような指示です。
これで本当に、クロアチアに勝てると思っていたのでしょうか? 勝つつもりがあったのか、相当に疑問です。
このアドバイスのために、どれくらいのコストがかかっているのか……考えたくないです。

最後のところで著者はこう語っています。

初出場のフランスワールドカップを終えて感じたことは、たくさんありました。
まず、決定的に太刀打ちできなかったのかというと、そんな気はしなかった。10回戦って5回勝つレベルではなかったけれど、10回負ける相手でもなかった。アルゼンチンやクロアチアが相手でも、2、3回は勝てるのではないかと思いました。p241

なるほど、と納得しました。
岡田トレビアーン武史大日本代表監督も、こんな認識でいたのだな、と。
だからこそ「ベスト4」なんてことを軽々しく目標に掲げられたのだな、と。
でも確率10分の3が2回あったとしても、ベスト4には届かないのではないかなあ。
それにそんな確率じゃあD判定にもならない***印ですよ。そんなとこを「志望校は○○大です」って掲げちゃうのは、どうなんですかねえ。

などなど、現在の日本サッカーを支えている『超一流』のサッカー観・認識が非常によくわかる希著として、花丸推薦したい本です。よくこれを書いてくれたと、本気で感謝したいです。もしこれを読んでいなかったら「もしかして……」と余計な期待を持ち続けてしまいますから。
それと現在の日本代表のスカウティング担当者の方々(お弟子さんとお呼びした方がよろしいのでしょうか?)、どうかどうか、「うまく騙してやったぜ自慢」とか「やばかったから、俺は韓国人(中国人)だって言ってやったぜ」などという、日本人全体を貶めるような行為は慎んで頂くよう、切にお願い申し上げます。

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