2010年8月24日火曜日

ユースの笑えない話

朝日新聞 2010年 平成22年 8月24日火曜日 朝刊
スポーツ 
『SIDE CHANGE 潮智史』
23日、15歳以下による日本クラブユース選手権で清水が宿敵磐田を下して優勝した。
前日のJ1では静岡ダービーを落として3連敗を喫していた。
兄貴分の悔しさを弟がすぐさま返した。

第10回大会から3連覇を達成して以来、13年ぶりの優勝。
埼玉、広島と一緒にかつて御三家と呼ばれたサッカーどころとしては寂しい気もするが、伊達倫央育成部長がサッカーどころならではの難しさを教えてくれた。
今では当たり前にJ1で優勝争いに絡む清水はジュニアと呼ばれる小学生年代のチームを持っていない。
将来のプロを育てる育成部門が始まるのは中学生年代のジュニアユースから。
毎年、小学6年を対象にした選考会を開いて募集することになるという。

もともと少年サッカーが盛んな清水には小学生年代のチームが無数に存在する。
1993年のJリーグ発足をきっかけに誕生したエスパルスはいわば後発のクラブ。
小学生年代からチームを作って子供たちをかき集めるようなことをすれば、地元の指導者やチームとあつれきが起きかねない。
小学生年代については、普及やスクール活動にとどめているのが現状だ。

ただ、ジュニアユースからユースと6年かけて育ててもプロ契約に至るのは毎年1人出るかどうか。
経営面からトップチームの人数は限られ、結局、即戦力を大学や高校出身者などに求める。
強化の目は自前の育成選手には向いていないという自己矛盾を抱え込む。
もっとも、こちらはほかのJクラブにも当てはまる話だが。

「その結果、トップに上がれなかったユース選手の進路の面倒を見るのが大切な仕事になる」。
伊達部長の言葉は笑えないような話で終わった。
ひとを育てるのは本当に難しい。
(編集委員)
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「ひとを育てるのは本当に難しい。」
こういう紋切り型で締めくくるようなコラムを、英国では天気予報型と呼ぶ。「ところによっては一時的に雨がぱらつく可能性もあるかもしれません。外出される場合は、折りたたみ傘などをお持ちになった方が良いかもしれません」などというあれだ。結果がどうなろうと、あなたもわたしも悪くありませんよ。誰にも責任はありませんよ。という、あれだ。うえっ、虫ずが走る。
ましてやこのコラムで語られていることは、人を育てることに苦労しているという話ではなく、育てる気などない組織が若い才能の人生を弄(もてあそ)んでいる、という話ではないか。それがこのコラム主には、わかってない。自分が何について語っているのかがわかっていない人間が書いている文章を読まされるのだから、こちらにも読解力が要求される。そういう意味では、このコラムは読み手を育てている。

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