2010年11月16日火曜日

久々にアルディージャを考える。

久々にアルディージャを考えてみます。問題となった観客動員のことについてです。

たとえばこんな↓ことをやったら、土壷(どつぼ。関西の肥だめ)にはまります。

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伝統的な商圏外への拡張戦略をやめ、本来の商圏にに集中しろ。
安値での集客より、定価で買う顧客を大事にしろ。
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これは三流の安っすいコンサルなんかが提案する経営改善策の典型。
ブックオフの105円コーナー並んでいるような、経営指南本の第一章にも書いてあることが多いです。

「伝統的な商圏」や「本来の商圏」に顧客がいるのなら、これもあながち間違いだとは言えない場合もあるかもしれないかもしれないですけど、旧大宮市東部には、それほど熱いサッカー熱は元々ないですし、じゃあ自称「サッカー王国」であるところの埼玉県全域を商圏にできるかというと、それも難しい。大宮より北側の観客をナイターに集めようと思ったら、大きな無料駐車場がないと厳しいです。帰りの足がなくなっちゃいますから。

「安値での集客より、定価で買う顧客を大事にしろ。」については、年間シートじゃなく定価で入場し続けている熱烈なサポの心情としてはそうなるのも理解できますけど、、、としか言いようがないですねえ。

新聞拡張団がなぜ存在するのかや、旅客航空券の販売方法などがなぜああなってるのかや、一休.comやクレジットカードというビジネスモデルがなぜ成立するのか(宿泊施設や商店の側から見て)、を考えてみれば、「集客」こそが経営の根幹・土台なのだということが、経営戦略を考える上での大前提となっていることは、おわかりいただけるとは思うんです。
人・物を含めた設備というのは、使ってなんぼです。置いておいたら、人は経験を積めないし、物は劣化も早くなりますし。それに来客数が多ければ、そこから別な展開(広告とか販促とかグッズ販売とか飲食とか)につなげることもできます(ネットビジネスなんて全部これです)。でもそれも、たくさんのお客さんあってのこと。いないお客さんに焼きソバは売れません。

そもそもアルディージャが陥っている深い穴は、世界全体が陥っている大きくて深い穴の一部なのだと言う面もあります。

そのことを理解したうえで、(お金をかけずに)何ができるか、アイデアを考えてみましょう。

今、世界中でスポーツ観戦&体験市場が縮小しています。それはサッカーに限らず、バスケットボール、バレーボール、テニス、ゴルフ、野球、マラソン、水泳、そしてエンターテイメントスポーツの代表格である、ボクシングやレスリング・格闘技系、その他すべて軒並み絶不調なんです。
(まあもっとも、この話はスポーツだけじゃなくて、映画やテレビ、ギャンブル、そしてセックス産業においても同じ状況なんですけど)

例外は極一部のスーパースターやスーパーチーム、あるいはスーパーイベントです。

このあたりにアルディージャの未来へのヒントがあると仮定して、分析を進めてみます。

【ローマ人はコロセウムに熱狂した】

コロシアムでは実際に命のやり取りが行われていたから、だけで観客が熱狂したわけではありません。
ついこの間まで、生活と死は隣り合わせの関係でした。人が死ぬところなんて別に珍しくなかったのです。
ではなぜコロシアムで人々は熱狂したのか。満員になったのか。

それは、そこが、自分を解放させることのできる「場」だったからです。
普段の生活の中でやったら変人に思われる、あるいはどこかへ連れて行かれてしまうような「興奮」「狂気」「雄叫び(おたけび)」を、コロシアムでは発することができました。
当時のローマは現代に優らずとも劣らないストレス社会、自己抑制社会でした。
ポンペイの遺跡から、豪華な食事の絵が描かれた壁や床が発掘されていますが、あれらの意味するところは、そこに酒池肉林の日常が存在したこと、ではなく、それを渇望していた日常があったということです。ありふれているものに人の関心は向きません。ここにはないけど欲しいものに人の関心は惹きつけられるのです。

コロシアムの秘密がわかってきました。
コロシアムには「ここにはないけど欲しいもの」があったのです。それは「自分を解放させることのできる「場」」です。
つまり、「普段の生活の中でやったら変人に思われる、あるいはどこかへ連れて行かれてしまうような「興奮」「狂気」「雄叫び(おたけび)」」を発しても耳目(じもく。世間からの注目)を集めない状況です。それをしているのは自分だけではない環境。それこそが、コロシアムに足を運ばせていたのではないでしょうか。

ここで目を転じて、もうここ10年以上、世界で最も成功しているプロサッカーリーグの双璧である、イングランドのプレミアリーグと、ドイツのブンデスリーガを見てみましょう。
両リーグでは、スター選手のいないチームであっても、スタジアムは満席です。いつも興奮のるつぼです。
では毎試合毎試合、同じ観客が足を運んでいるのでしょうか。
意外なことですが、両リーグとも実は年間シートの占める割合はそれほどではありません。私の記憶ですが、おそらく5割は行っていなかったはずです。大半の観客が当日券か単試合前売り券で入場しているのです。

それでスタジアムは満員御礼。

なぜこんなことが起きえるのでしょう。

わたしはその理由として「テレビ中継の工夫」を第一に上げます。

おいしいお店特集とか、納豆ダイエットブームとか、スカイツリーのこととか、そういう「テレビが作る人だかり」というのを思い返してみればわかるのですが、人は、人だかりに惹かれます。

長い行列に並んでみたり、バーゲンですでにできている人だかりがさらに膨れ上がる現象は、人間の本能に直結した行動です。

【生存本能】
他者が集(たか)っている=そこにエサ(食べ物)がある

この行動パターンはまた、相乗的な経済効果も生みます。
「あそこに人が集っている」→何かお得なことがある(行かないと損をする)→さらに人集りが大きくなる→あれだけ集っているのだから、流行っているのだろう→宣伝・広告・販売・周辺ビジネス→行政もインフラ整備→便利になってイベントが増える→人が集まる→「あそこに人が集っている」→あとはループ……

イングランドやドイツの新しいスタジアムへ行って意外に思うのは、想像していた以上にゆったり作られていることです。それこそ見下ろすような角度の観客席でぎゅーぎゅーに詰め込まれて観戦するのかと思って気合いを入れていくと、拍子抜けするくらいに快適で、きれいで、移動もスムース。そして、だからこそ、実際にスタジアムで観戦した人は、楽しさを満喫できるんですし、他の人にもスタジアム観戦を薦めますし、自分もまた足を運ぼうと思うんです。サッカーの試合だけなら高いチケットでも、それ以上の満足を得られれば、とてもリーズナブルなイベント参加料、ストレス発散効果料金だからです。

では、まず、お客さんに足を運んでもらう工夫として、大宮アルディージャは何をすべきなのでしょうか。
それは、

テレビカメラの位置を、バックスタンド側に移動すること

です。
NACK5スタジアムの中継画面は、興ざめそのものです。
狭く薄いバックスタンド越しに見える、立派な野球場、そして広い空。
コロセウム感なんてまったくありません。ゼロ以下です。
観客の興奮も上へスカスカ抜けていってしまいます。
試合を見ながら、隣の野球場の観客席の様子や照明灯、そして雲の形などが、どうしても目に入ってきてしまうようなテレビ画面は、サッカーへ集中させない手段としては最高ですが、サッカーを見たい層には最悪です。「オレンジ一色に」などとたまに企画しているみたいですけど、あれではどうがんばっても、緑一色(ピッチの芝と公園の木々、野球場の壁面)オレンジちょろちょろです。

テレビ中継をするカメラの位置を、現在のメインスタンド側から、バックスタンド側へと移動させることを私は提案したいです。
そしてメインスタンドには、市の名士や、スポンサーの関係者、できれば有名人著名人、ベンチ入りしていない選手とその家族、彩りとしてきれいどころ、などに座って頂きます。それもアルディージャの社長やさいたま市長、そして選手たちの周辺にです。そうすればそこは必ずテレビ中継中に映像で抜かれますから、視聴者にも「あんな人も来てるんだな」と感じてもらえますし、またスポンサーの皆様にもテレビにうつったことで若干の満足もいただけます。「昨日、おたくの社長テレビにうつってましたね」これだけでも、営業トークのちょっとしたネタにできますから。実際、プレミアでもその効果をスポンサー獲得に利用しています。プレミアレベルの中継だと、世界中の営業先や消費者に、社長の顔を宣伝できますから、一国の一経済誌に載るよりもずっと効果的です。
アルディージャへのスポンサードで効果を実感してもらうには、こういう方法も使っていくべきだと思います。



とにかくまずは、テレビ中継の時に視聴者が見るのは、「選手とボールと観客、これだけ」という状態にしないと、実際に行ってみたくなるようなテレビ画面は作れません。
ちっぽけで数段しかない観客席、大きくて立派な野球場、広い空、森の木々、これでは熱狂なんてできそうもないじゃないですか。違いますか?
(まあ、世の中には、空の下、自然の中でじゃないと興奮しない、という趣味の人もいるにはいますけど)

折り込み広告や埼玉新聞に全面広告を入れたって、これまで以上の集客効果なんて得られません。
それはもうすでに実証されていることです。

テレビのサッカー中継は、CMだけが宣伝ではないんだ、ということにアルディージャの経営陣は気づいてください。いや、気づけなければ、ずうっと横ばいに近い下降線です。
テレビにうつっているもの、それすべてが広告に使えるんだという視点に立って、チームの経営を再建して欲しいと思っています。
これは、あのNACK5スタジアムだからできることなんですよ。
巨大な埼スタじゃあ不可能なんです。

短所を長所に、
欠点を個性に、
不利を有利に変えてこそ、経営手腕、リーダーの腕の見せ所です。

NACK5スタジアムが、シーズンの間ずうっと毎試合、大宮アルディージャのサポーターであふれかえっている姿を私は見てみたい。
そのためにも、まず、テレビカメラの位置を変えましょうね。鈴木茂社長さま。


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