2010年11月19日金曜日

大甘裁定で最低よ!

『大甘裁定で最低よ!』

世の中にはいろんな考え方があるなあって、あらためて思わされた記事です。

----------------------------------------------
J1大宮観客「水増し」に大甘裁定のナゾ、処分は過去最高額の制裁金&けん責のみ
2010年 平成22年 11月17日(水)夕刊フジ

 大甘裁定といわざるを得ない。Jリーグは16日、J1大宮が2007年11月から全ホームゲーム58試合で11万1737人もの公式入場者数の「水増し」を行っていた問題で、過去最高額に並ぶ制裁金2000万円とけん責の処分を科した。

 Jリーグの不祥事に関する処分は(1)けん責(2)制裁金(3)勝ち点剥奪(4)出場権剥奪(5)除名の5段階。

 最終決定した大東和美チェアマン(62)は「裁定委員会からの答申通り。勝ち点を減らすことについてはピッチ上でのことではないので最初から考えていなかった」と説明した。

 これまで最も重い処分は2008年5月31日の浦和-G大阪で、岡田正義主審の不可解判定が引き金となったサポーターの暴動による処分。未然に防ぐことができなかった浦和に2000万円の制裁金が科せられた。

 今回の問題が発覚した当初、「Jリーグの信頼を失墜させる許されない行為」と、Jリーグや日本サッカー協会の幹部らも激怒。Jリーグ史上最も重い処分が確実視されていた。

 海外では2006年、イタリア・セリエAの強豪ユベントスによる審判への買収などが発覚。不正があったとされる過去2季分の優勝と次のシーズンの勝ち点30を剥奪され、約1200万円の制裁金を科した上で、セリエB降格という厳罰を科している。

 単純に比較はできないが、今回の大宮の問題は、発覚から1カ月以上たった今も、大宮がJ2降格ラインの微妙な順位にいることへの「温情」ともとられかねない大甘処分だ。

 水増し報告した入場収入は約3億円にのぼるが、制裁金はたった2000万円。同じく埼玉にフランチャイズを持つ浦和の観客動員にプレッシャーを受けての“犯行”だったが、図らずも制裁金の額だけが浦和に追いついた。 (夕刊フジ編集委員・久保武司)
----------------------------------------------
勝敗に直接影響するような不正なら、ペナルティも勝敗に関して(代表的な物では勝ち点を剥奪など)科すというのが論理的に正しい裁定であることは明白だと思うんです。ですから、セリエの八百長で勝ち点が剥奪されたのは、至極当然の結果ですよねって私なんかは納得してしまいます(いかさまで得た掛け金は倍返し3倍返し)。
で、試合の勝敗とは直接関係のない観客のトラブルであるとか、今回のような運営上の虚偽発表については、チームの経営母体へのペナルティにするっていうのが、おんなじように正当な賞罰ってことになるんじゃないかなあ、とも思っています。

「水増し報告した入場収入は約3億円にのぼるが、制裁金はたった2000万円。」にいたっては、何が言いたいのか、ちょっと私にはわかりません。まさかこの記者氏は、水増しした入場料が「収入」だったとでも理解しているわけじゃあないですよね。いくら最近の記者さんでもさすがにそんな誤解はしないと思うんですけど、もしそうだとしたら、「いや、むしろ逆でしょ」とメモに書いてそっと手渡ししてあげたくなるような気持ちになってします。だってその早とちり度合いは、菅総理とタメをはる“紙一重”の域に達していますから。もはや“驚愕”の一言に尽きます。

仮にもしJリーグの指針を脇へ置いておいて今回の件を見つめ直してみることができるのならば、イベント入場者実数が主催者発表よりも少なかったことはイベント運営がとどこおりなく成された証、という理解をすることもできるんです。
ざっくり説明すれば、安全や不測の事態への備えとして余裕を持って見積もりをして、イベント後の広報用数値も、予測とほぼ一致する数字に調整したりします(あるいはやや多めにして、『予想を超えたほどの好評』であったアピールに使います。最近の新車販売なんかはこればっかりで、消費者にも見透かされてしまってるくらい、定番の広報手法です)。あまりに見積もりとかけ離れていると、予測をした人間の能力が問われるからです。多すぎる見積もりは、無駄なコストそのものだからです。ただし正確な数字もちゃんと把握していますよもちろん。でもこれは部外秘、のちのち内部で今後のために使用するデータとして保存されることになります。

その店に何人の来客があるのかなんてので店の話を鵜呑みにする税務署員がいないように、そもそも、正確な来客数などの類(たぐい)の数字は、極秘扱いされる類の経営情報にあたります。余談ですけど、「売れている物ほど売れる、流行っている店ほど流行る」という消費傾向が強くなってからは、著作権の絡むビジネスではこの数字がさらにひとつ増えるという現象が起きています。宣伝用に発表する「誇大数値」と印税・著作権の計算に使用される「過小数値」と、出版社・レコード会社が内輪で使用する極秘の「実数値」です。経済成長率が高いと投資資金を呼び込みやすい新興国や、そこへ資金を回すことで利益を得ている投資会社や銀行やコンサルタント会社も、この3つの数値を巧みに使い分けて、情報弱者やメディアリテラシーの貧弱な人々から金をだまし取ろうとしています。要注意です。うっかり信じると、あっさりハシゴを外されます(でも日本政府も似たようなことはあちこちでやっているので、そんなによそを指さすことはできないですけど、それでもそれをわかっていろいろ経済ニュースや広告を見てみると、結構おもしろいものですよ)。

そもそもの話が、客観的に正確な数字を知りたいのなら第三者に調査させるべきです。当事者に数えさせれば、どうしてって主観的な影響を受けている疑念は残ってしまうからです。もっと言えば、そんなに観客数にこだわりがあるのであれば、チケット販売数も公表させろという話にもなってくるはずなのではないでしょうか。観客1万人のうち、無料の招待分が1万であっても、JリーグとしてはそれでOKということなのでしょうか? もしそうであるなら妙な話です。ならいっそ、CGか人形でも置いておけばいいじゃないですか。同じことなんですから。

「いや、ウソをついたことがいけないのだ」という批判なら、それはそれで理にかなっていると言えます。
ウソはいけない。ウソは悲劇の序曲だからです。

でも、今回みたいにウソをついて得た実利(実際の利益)がないような「見栄のための」ウソに対する罰は、「私は嘘つきです」という札を首からぶら下げさせて、市中引き回しにするしかないと思うんです。
アルディージャの件で言えば、NACK5スタジアムの正面入口に、今回の件の詳細と顛末、そして反省の弁をデカデカと掲げさせるのが一番いいと思います。
スタジアムは借り物だからとアルディージャが言うのでしたら、練習場とクラブハウスにデカデカ掲げさせるべきです。
『私たちはウソをつきました。入場者数を詐称しました。ごめんなさい。もうしません』と。

勝ち点剥奪というのは、誰のための罰なのかわからないと私には思えるんです。
移籍するかもしれない選手にとって、それは罰になるのでしょうか?
収入の多くを親会社からの支援に頼っているチームにとって、それは罰になるのでしょうか?
親会社からの出向経営陣にとって、それは罰になるのでしょうか?
アウェイにまで遠征しないほとんどの観客にとって、それは罰になるのでしょうか?
そもそもJ2から上がってきたチームにとって、勝ち点剥奪による結果のJ2落ちは、罰になるのでしょうか?

大宮アルディージャというチームにとって罰と呼べるのは、「NTT」という看板に傷が付くこと、それしかないように私には思えます。
ふつうに暮らしている人が想像するよりもはるかにNTT(旧電電公社)は、巨大で強大です。保有している不動産を整理して売却するだけで、笑っちゃうくらいお金を作り出せます。また保有している金融資産だって、そこらの銀行なんか土下座して道を空けるくらいのレベルです。地デジ化によってもっとも利を得るのはNTTだろうとも言われています。空いた周波数帯を利用するサービスを展開するためには、結局NTTの電話線・光ファイバー網に頼るしかないからです。

「大甘裁定」と記者氏は書いていますけど、もともとこれは、「もはや大騒ぎするような問題じゃなかった」のではないでしょうか。
『エブリデイ満員御礼』のプロ野球に対抗する意味合いとして、むかしは多少の価値があった数字かもしれませんけど、今では逆効果、各チームの足を引っぱっている面の方が大きいと私は思います。
この数字が伝えているのは、「このチームはこんなに人気がないんですよ」というメッセージだけなんですから(観客数の最も多いレッズにしても、「レッズでさえ落ち目なんですよ」というメッセージに受け取られてしまっています)。

決めたことなんだからきっちり守れ! 守らなかったら厳罰に処す!

こういうのは実に「ピュアで、大切な気持ち」だと思いますけど、大人が抱く、それも己の専門分野に関係する話題でジャーナリストがする論評としてはナイーブだなあとも思います。
できることなら、こういう「大甘裁定で最低よ!」みたいな表層的な脊髄反射ではなくて、アルディージャの「なぜ」、協会の「なぜ」、Jリーグ全体の「なぜ」、そしてスポーツビジネスの現況の「なぜ」などについて、記者氏の脳を経由した論評を読んでみたかったです。

Don't cry. Just revenge.
But the best revenge is to live well.

↑という格言があります。
「泣くくらいなら復讐しろ。だがな(小僧)最高の復讐はお前がこれを乗りこえることなんだぜ」
というような意味でしょうか。

自業自得ではありますが、アルディージャの経営陣の皆様には、これを機に「アルディージャは見違えるように生まれ変わったよね」と評されるようなチームを作り上げてください。そしてこの記者氏にいつの日か「あの裁定は、最高の裁定だった!」と言わしめるような、NACK5スタジアムへ向かうサポーターであふれかえる氷川参道を見せてください。

お願いします。



0 件のコメント:

コメントを投稿