2010年6月8日火曜日

敗戦後の精神ケア

練習試合ならともかく、それなりの公式戦で悔しい敗戦をした場合には、なんらかの精神的なケアをする必要があります。
「うちの子は、負けてもけろっとしてるから平気平気」と思っていても、実際には心に傷を負っていたりします。
ひとりっ子、あるいは同性の兄弟がいなかったり、またライバルと勝ったり負けたりしながら競い合うような環境がなかなかないいまどきの子は、はっきりとした負けを経験する機会が極端に少ないため、自分が負けたことのショックは、大人が思っている以上に深刻である場合が通常です。
一度の負けを、まるでもうそれでゲームオーバーかのように受け取ってしまうのです。
なんだそんなことか、と軽く見てはいけません。
はじめは単に落ち込んでいるだけだったものが、食欲不振、意欲減退、そして鬱(うつ)といった疾患へと悪化する可能性も決して低くはないのです。
子供の鬱は、いまとても増えてきています。ストレスに悩んでいるのは大人だけじゃないんですね。

子供に、負けは負けじゃない、ということを理解させることが最善のケアとなります。
そしてこれができるのは、子供たちが信頼している指導者・コーチの皆さん、そしてお父さんお母さんたちです。

「負け」は人生の味つけのひとつに過ぎません。
これを子供に伝えるのなら、「相手はなぜ勝てたんだと思う?」と、大人の側で子供の視点を変えてあげることがいい方法になります。
「自分が負けた」という敗者の視点から「なぜ相手は勝ったのだろう?」という勝者の視点へと転換させるのです。
でも、
「きっと猛練習したからだ!」
「そうか、じゃあお前もこれからは何倍も練習しないとな」
「うん。ぼくやるよ!」
とはなかなかなりません。負けを経験し慣れていないいまどきの子は、

練習量の差=苦しさの差であるから、練習を増やさないとまた負けるということなら、もう勝負はしない。そうすれば負けないもん。

と「避ける」ことで問題(いやだなあと心が感じる精神的苦痛)を遠ざけようとします。
こうした解決法を体験的に学んでしまった子の行き着く先は、自分にとっていやな社会からの逃避、この結果のよくあるケースのひとつが、いわゆる「引き篭もり」です。他には誰とも「競わない」特殊な趣味にのめり込んだり、誰からも「批判されない」善行(ボランティアやNGOなど)に励んだりします。

子供たちをそういう若者や大人にしたくないと考えるのなら、「負け」も面白いものだという視点を持たせるように、周りの大人が導いてあげることが効果的です。
たとえば、いまどきの子は、、『遊戯王』や『ポケモン』といったバトルカードゲームにとても親しんでいますから、それを利用して、対戦した相手のことをカードにしてしまう手もあります。自分がマークした相手はどんな選手だったのかを、小さなカードにまとめてしまうんです。
この作業をしていると、知らず知らずのうちに、子供たちは自分たちのことも「カード化」してとらえるようになります。この年代で自分を客観視する経験を積むことは、それをしていない子と比べて、とても大きなアドバンテージとなります。親が言わなくても自分で頑張る子は、みな早期に自分を客観視できるようになった子たちです。

負けを「ああ、残念だったね。次がんばればいいよ」で終わらせたのでは、大人は大人の役割を果たしていません。
せっかくその子の「負け」に立ち会えたのですから、その「負け」をその子の肥やしにしてあげてこそ、大人は大人の役割を果たしたと言えるのです。

「勝ちもいいけど、負けも面白いんだぜ。だって次に勝ったら喜びは倍になるんだから」

負けから逃げない、負けを真正面からにらみつけ、分析できる力を、子供たちに育んでください。
それが出来たら、大人として、あなたの勝ちです。

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