2010年6月5日土曜日

コートジボワール代表

昨夜、コートジボワール代表がテストマッチをした。対戦相手はアジア地区代表の日本。場所はスイス。

コートジボワール代表メンバー
GK
1 ブバカル・バリー
(Boubacar BARRY) ロケレン
(ベルギー) 79.12.30 180/69
16 アリスティード・ゾグボ
(Aristide ZOGBO) マカビー・ネタニヤ
(イスラエル) 81.12.30 184/82
23 ダニエル・イェボアー
(Daniel YEBOAH) ASECミモザ 84.11.13 187/80
DF
22 スレイマン・”ソル”・バンバ
(Souleymane "Sol" BAMBA) ハイバーニアン
(スコットランド) 85.1.13 190/90
2 ベンジャミン・アングア・ブル "ボリー”
(Benjamin Angoua BROU "BORY") ヴァランシエンヌ
(フランス) 86.11.28 178/69
17 シアカ・ティエネ
(Siaka TIENE) ヴァランシエンヌ
(フランス) 82.2.22 176/72
20 ギー・デメル
(Guy DEMEL) ハンブルガーSV
(ドイツ) 81.6.13 189/85
3 アルトゥール・ボカ
(Arthur BOKA) VfBシュツットガルト
(ドイツ) 83.4.2 166/65
4 コロ・トゥーレ
(Kolo TOURE) マンチェスター・シティ
(イングランド) 81.3.19 183/76
21 エマヌエル・エブエ
(Emmanuel EBOUE) アーセナル
(イングランド) 83.6.4 178/70
MF
6 グネリ・ヤヤ・トゥーレ
(Gneri Yaya TOURE) バルセロナ
(スペイン) 83.5.13 187/78
12 ジャン-ジャック・ゴッソ
(Jean-Jacques GOSSO) ASモナコ
(フランス) 83.3.15 177/75
10 ジェルヴェ・ヤオ・クアッシ ”ジェルヴィーニョ”
(Gervais YAO KOUASSI "GERVINHO") リール
(フランス) 87.5.27 179/68
14 スティーブ・ゴフリ
(Steve GOHOURI) ウィガン・アスレティック
(イングランド) 81.2.8 188/85
9 シェイク・イスマエル・ティオテ
(Cheik Ismael TIOTE) トゥウェンテ
(オランダ) 86.6.21 180/79
13 コフィ・ロマリック・エンドリ
(Koffi ROMARIC N'DRI) セビージャ
(スペイン) 83.6.4 187/85
5 ディディエ・ゾコラ
(Didier ZOKORA) セビージャ
(スペイン) 80.12.14 183/78
19 クマティアン・エマヌエル・コネ
(Koumatien Emmanuel KONE) インテルナシオナル・クルテア・デ・アルジェシ
(ルーマニア) 86.12.31 175/75
18 アブドゥルカデル・ケイタ
(Abdulkader KEITA) ガラタサライ
(トルコ) 81.8.6 182/78
FW
11 ディディエ・ドログバ
(Didier DROGBA) チェルシー
(イングランド) 78.3.11 188/74
8 サロモン・カルー
(Salomon KALOU) チェルシー
(イングランド) 85.8.5 175/66
7 ドゥンビア・セイドゥ
(DOUMBIA Seydou) CSKAモスクワ
(ロシア) 87.12.31 178/74
15 アルナ・ディンダン
(Aruna DINDANE) レハウィヤ
(カタール) 80.11.26 173/72

この中から出場したのは以下の通り。

GK 1 ブバカル・バリー
DF 4 コロ・トゥーレ
  17 シアカ・ティエネ
  20 ギー・デメル
  21 エマヌエル・エブエ
MF 9 シェイク・イスマエル・ティオテ→19 クマティアン・エマヌエル・コネ
  6 グネリ・ヤヤ・トゥーレ
  5 ディディエ・ゾコラ
FW 8 サロモン・カルー
  11 ディディエ・ドログバ→7 ドゥンビア・セイドゥ→18 アブドゥルカデル・ケイタ
  15 アルナ・ディンダン→10 ジェルヴェ・ヤオ・クアッシ ”ジェルヴィーニョ”

ドログバは前半15分くらいに、センターサークル付近で日本の4番からカンフーキックを食らって右腕ひじ付近を骨折。


コートジボワールは実に私好みのサッカーを展開してくれた。
とにかくトップスピードで走り回る「狂犬」みたいなのが一人もいないというのがいい。
トコトコ、テクテクと常に細かくポジションを修正しながら、正確にパスを回していく。走らなければならないときは走るが、それでも8割程度以上の速度は出さない。それで十分だからだ。

ユニフォーム右肩の、鼻を振り上げ吠えている(おそらく怒り)象の右顔のすかしイラストも、いかにも象牙海岸という感じで良い。

コートジボワールの基礎技術の高さが象徴的に見られたシーンがあった。
前半35分。右サイド。4番コロ・トゥーレから8番サロモン・カルーへの縦パスがそれだ。
自陣ペナルティエリアでボールを受けたコロ・トゥーレは、かなり遠くの状況まで観察しながら左から右へと移動。パック(加重整地)されていない芝で、ボールは細かくバウンドしている。遅まきながら日本選手がチェックに来たが、それも子供をあしらうようにかわす。そして右サイドから、8番のカルーへ、縦一直線のパスをインサイドで出した。その間、足下を見るために、一度も顔を下げていないことへまず注目。
次に注目するべきなのは、そのパスのボールだ。
何気なく見ていると見逃してしまうが、実はこのボール、グラウンダーではない。およそ25メートル程の“ワンバウンド”パスなのだ。
そして注目の第3点目。その強烈なワンバウンドパス(もしかすると微妙にイレギュラーしたかもしれない)を、カルーはターンしながら一発でコントロールしている。右足のインサイドで。
これらのどこにも、TBSアナウンサーが事あるたびに連呼していた「驚異的身体能力」など関係していない。おそらく荒れたグラウンドと、よくはねる軽いゴム製ボールなどで培われた、すばらしい基礎技術、それだけなのだ。
代表チームに入るようなトップの才能を持った彼らでさえ、ヨーロッパのプロチームにスカウトされる段階で、ようやく高タンパクな食生活や筋力トレーニングのできる環境に触れることができる。それがアフリカの選手たちだ。まあ最近は、いろいろなスポーツメーカーやクラブチームが「青田買い」の条件として、そういった援助をしてはいるが、まだそれでも世界の他の地域より貧しいことは間違いない。つまり、彼らの身体能力は、技術を習得したあとに、努力によって身につけたものなのだ。決してママのお腹から、筋骨隆々なベビーが誕生したのではないということを「驚異的身体能力」などという表現を安易に使うアナウンサーは忘れないで欲しい。私に言わせれば、彼らを表し「驚異的身体能力」などと言うのは、自らの内側に巣くっている差別感情をダイレクトにさらけ出していることに他ならないのだが、そこは所詮TBSのアナウンサー、そんな自分のことにはまったく気がついていない。さすがは不祥事と不倫のTBS。あ、そうそう、次からは、ファウルスローのルールと、いつが前半か、いつが後半か、の違いくらいは理解した上で実況してください。

右サイドの20番ギー・デメルもいい。ブラジルのマイコンに似たプレースタイルだが、こちらの方がずっとシャープで意欲的で、そのうえフェアーだ。彼は激しいコンタクトのときでも、絶対腕を使わない。アフリカにも武士道のようなものがあるのだろうか?
15番アルナ・ディンダンは、2対1の状況でもまったく動ぜずキープできる。
後半11分の、8番カルーと15番ディンダンのコンビプレーで、ディンダンは一度潰されるが、すぐに次のプレーに切り替えて、結局対戦相手のDFは置いてけぼりにされてしまっている。サッカーIQのできが違うという場面だった。
9番シェイク・イスマエル・ティオテのボールを持ったときの姿勢・体勢は、見ほれるほどに素晴らしい。
全選手の中で最も優れていた選手は6番のグネリ・ヤヤ・トゥーレであると断言できる。後半18分48秒あたりで後ろからチェックに来た日本選手を、いちべつもせずにかわして見せたのはご愛敬としても(無能過ぎる日本選手の接近の仕方がひどすぎたせいでもあるし)、90分間まったくミスのないポジショニングは、まさにスーパーであるとしか言いようがない。この試合を録画してある人にはぜひ一度、この6番のポジショニングにだけ注目して、試合を見直してみて欲しい。きっと新鮮な感動を覚えていただけることと思う。それくらい、彼のレベルは飛び抜けていた。
この6番ヤヤ・トゥーレと5番ディディエ・ゾコラ、4番コロ・トゥーレが構えるバイタルエリア中央を突破することは、どんなFWでも不可能だろう。

私はこの6番ヤヤ・トゥーレを見ていて、試合中に急逝したカメルーンのマルク・ビビアン・フォエのことを思い出した。この二人は、プレースタイルも、仕草も、ボールの持ったときのリズムも、とてもよく似ている。コートジボワールとカメルーンは隣接してはいないが、二人はどこかで血がつながっているように思えて仕方がない。アフリカの悲しい歴史の中に埋もれているミステリーが、サッカーを通じて表出してきたのかもしれない。

不幸にもドログバ選手が骨折により離脱してしまった。だが、正直言って、むしろこのことはコートジボワールチームの結束につながる方へ寄与するように思える。ワールドカップでその選手が本当にストライカーとして機能するかどうかは、実のところ大会が始まってみないとわからない。スター選手と重要な選手は、必ずしも一致しないものなのだ。確かにコートジボワールにとってドログバは重要な選手ではあるが、その重要さはヤヤ・トゥーレほどではない。もしいなくなったのがヤヤ・トゥーレだったとしたら、コートジボワールのワールドカップはその時点で終わったことになっていただろう。

就任してわずか2週間だという、エリクソン監督も、このチームに合っているように見えた。イングランドで落とした評価を、このチームで挽回しようと燃えているはずでもある。

コートジボワールがワールドカップでベスト4に入ったとしても、私はまったく驚かない。なぜなら彼らは、優勝にさえ値する力を持ったチームなのだから。

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