2010年6月15日火曜日

サルでもわかるポジショニング

まず知ってて欲しいのは、ポジショニングに正解はない、ってこと。
基本はあるけど正解はない。でも間違ったポジショニングってのはある。これが難しいとこなんだ。

正解はないって意味なんだけど、結局終わりよければOKってとこがポジショニングには常にあってさ、例えば昨日のワールドカップ日本対カメルーン戦での日本の得点シーンだって、あれ、本田のとこにまでボールが抜けてきたからいいポジショニングってことになってるんであって、そうじゃなかったらはたしてどう言われてたかわかんないよ。
だってさあ、また見る機会のある人には確認して欲しいんだけど、確か──
・センタリングをあげた松井は、切り返しにかかってから一度も顔を上げていない。つまり、本田が移動した位置を見ていない。
・松井に限らず、多くの選手が試合を通して、ロングキックの飛距離コントロールに苦労していた。
・カメルーンの選手が本田の前の日本選手に競りに行ったと言うことは、ボールの軌道自体は、その位置へ来るはずの軌道だったと考えられる。
・仮にもしも、センタリングがカメルーンの選手の予測通りだったとしたら、競りに行かなかった本田選手の判断は非難されたかもしれない。フィジカルで負けたとかなんとか。あるいは、きれいにクリアされて、誰の記憶にも残っていないシーンだったかもしれないし、松井選手は切り返さないであげた方がよかった、などと言われていたかも知れない。

万が一、というか可能性はかなりあることではあるんだけど、あそこで切り返したらファーに蹴るよ、と事前に打ち合わせが出来ていて、それなりの練習も積んでいた、のかもしれない。でももしそうだったとしたら、あのボールは本田選手の頭の上を通過してゴールラインを割っていたはず。ファーに行くにしては軌道が低かったことは、先述したカメルーン選手たちの予測の様子から明らかなんだから。意図的にボールを落とすことは出来ても、浮かせることなんてできないんだから、いくらジャブラニって言ったってさ。

カメルーンの19番は、「何でマークを外したんだ」なんて言われてんだろうけど、いってみりゃあ空中でのイレギュラーバウンドみたいなもんだったんだから、カメルーンには不運で日本には幸運だったってこと。それだけ。

つまり、あの場面でファーへ下がった本田選手のポジショニングは、決して「正解」だったってことじゃないわけさ。だから少年サッカーチームのコーチたちも、似たような場面で子供たちに、なんでもかんでも下がりゃいいなんて教えちゃあダメダメ。センタリングが上がって、ゴール前には2人しかいなくて、なおかつちっこい方を置いて、でかい方が逃げるなんてので点になるなんてことはそうそうないからね。

ポジショニングに正解はないことはなんとなくわかってもらったことにして、じゃあなんで間違いはあるのかって話に移るんだけど、これの説明にはまず「ポジショニングの基本」ってのをわかってもらう必要があるんだ。
どんなことでも基本ってのはシンプルなもんで、もちろんこの原則はサッカーのポジショニングにも当てはまる。
じゃあそのシンプルな基本ってのは何なんだよ、とかってもったいつけるほどのことでもなくて、それは

ボールが来そうなところで待ち伏せる

ってことにつきる。

ただこの「来そうな」ってところが、個人の技量とか、体格とか、体力とか、走力とか、あるいは相手のタイプとか、お互いの戦術とか、チーム構成とか、風とか、点差とか、それこそボールの種類とか、とにかくあらゆる要素によって変化する上に、一瞬後なのか、1秒後なのか、数秒後なのか、という時間的な変数も加わる。
シンプルにまとめると、

「来そうな」とこなんて「わかりっこない」

ってこと。

だから、特に守備面では、「来そうなとこ」の予測精度を上げるために、組織的な戦術が発達してきたわけ。
それだってもちろん正解なんてない。今回のワールドカップだって、オランダ、イタリア、ドイツ、イングランド、コートジボワール、ナイジェリア、なんかが、かなりわかりやすく堅固な組織ディフェンス戦術をとってるのがものすごくわかりやすいけど(普段別々のチームでやってる代表チームだから、戦術ルールでかなりメリハリをきかせて、混乱を防いでるんだと思う)、そのやり方は、まるっきり違うものになってるのがとても面白い。

つまり間違ったポジショニングってのは、このチーム内のルール(それがコーチの指示によるものか、選手たちが自然にあみだしたものかに関係なく)から外れたポジショニングってことなんだ。
だからコーチは「お前のポジショニングが悪いんだろ!」なんて怒鳴る前に、ちゃんと子供たちに、そのチームにおける守備のルールを共通理解させないとダメダメ。
カメルーンのコーチは、あの場面で19番が、競りにいくのか、マーカーについていくのか、チームのルールではどうするべきだったのかがちゃんとしてないと、あの19番を叱責することなんてできないし、しちゃいけない。それは「二度あることは三度ある」と「三度目の正直」を使い分ける経済評論家か競馬の予想屋みたいなもんで、すべて後知恵でしかねえのよ。フォレストガンプがアップルの株買ったシーンみないなもんで、見ている方はかなり興ざめ。

結局のとこ、ポジショニングの練習をするには、まずどんなルールでもいいから、チームとしてのルールを決めないと始まらないんだよね。
簡単なルールでいいんだ。4-4-2なら「ハシゴの形になるように」とか、3-5-2なら「扇の形になるように」とかでもいい。それをまず徹底させることで、ポジションってものを意識するようになるから、あとは状況に応じて細かいルールの修正を加えて行けばいい。
1対1のポジショニングも同じこと。
まずルールを決めてあげる。
とにかくチェックに行くのか、あるいは縦へのパスコースを切ることを優先するのか、それだけでも決めてあげれば、次はそのルールが破られたときに、コーチの出番となるし、子供も自分たちで考える機会が生まれる。
攻撃の時だってまったく同じ。
攻撃は自由にってよくいうけど、日本の子供たちにそれはあまり適さない指導法だっていうのが俺の持論。
極端なまでにルールを決めてやる、例えばボールを持ったら、まず右へ行く、なんていう無茶苦茶なルールでも俺はかなり効果的だと確信してる。

自由は、そのルールの、そのまた先にあるのだ!

守らせるためのルールじゃなくってさ、破らせるためのルールって考えを持つことが、少年サッカーの指導の面白さに気付く第一歩になるんだぜ!

と、熱血教師風なセリフで終わってみた。

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